本記事では、ベトナムの言語事情について徹底解説していきます。英語を中心に日本語についても解説しますので、これからベトナム人と仕事をする方などにおススメです。
今回は客観的事実をベースに、ベトナム滞在歴のある筆者の感覚・経験もお話しします。そして結論として、ベトナム人と仕事をするときの最適なコミュニケーションの方法を示したいと思います。本記事を読めば、ベトナムおよびベトナム人への理解が一歩深まるでしょう。
1.ベトナムの英語水準はどのくらい?
英語力を測る基準はたくさんありますが、今回は『TOEFL』(トーフル)を基準にベトナムと日本の英語水準を比較していこうと思います。TOEFLといえば、TOEIC(トーイック)と並んで有名な英語試験です。日本国内では、TOEFLは海外留学向け、TOEICは国内就職向けと位置付けられています。これが今回TOEICではなくTOEFLを選んだ理由です。
以下のグラフは過去14年分の、ベトナムと日本のTOEFLの平均得点をまとめたものです。
(出典:ETS)
2005年から2019年までの過去14年間では、毎年ベトナムが日本の少し上を行っています。もちろん受験者の層などを考慮すると、これだけでベトナム人の方が英語で優れているとは断言できません。
(注意:TOEFLを作成しているETSは、統計データを国同士での比較に用いることを推奨していません。受験者数や経済に差があるからです。しかしそれでも両国の状況を客観的に観察でき、かつボリュームのある情報であることは間違いありません。ですのでちょっとした参考程度にご覧ください。)
この他にも国ごとの英語水準を公平に示せそうなデータを探しましたが、これというものには出会えませんでした。なので統計情報以外の方法で、ベトナムの英語水準を考察する必要があります。
次の章ではベトナムの外国語教育の制度と、筆者がベトナムで感じた現地の英語について紹介していきます。
2.ベトナム現地の英語教育はどうなっている?現地で感じた感覚も紹介
ベトナムで最も学習者の多い外国語は英語です。ベトナムでは2011年から、小学校における第一外国語の学習を3年次から始めると定められています。ほとんどの小学校では第一外国語は英語となっています。
対する日本では、小学校での英語必修化は2020年からです。授業自体は移行措置として2018年から始まっていますが、ベトナムと比較すると遅いと言わざるを得ないでしょう。ベトナムは日本と比べて、幼少期の英語教育への意識が強いと言えるでしょう。
またベトナムでは英語塾が乱立しています。英語を習得することで就職できる企業・職種の幅がグンと広がるので、教育熱心な親は子どもを英語塾に入れたがる傾向にあります。
ベトナム語と日本語の共通点は、自国でしか使えないマイナー言語という点です。つまり英語話者の価値が高いというのは、ベトナムも日本も同じなのです。
また感覚の話となりますが、日本人は完璧な英語を話さなくてはいけないという意識が強く、せっかく勉強した英語を話すことにためらいを覚える場合が多いでしょう。一方、ベトナム人はまず未熟な英語であっても積極的に使ってみて、会話のスキルを向上させようという意識を持っています。観光客が多い地域では、道端の地元の人々でも外国人を見かけるとたどたどしい英語でも積極的に話しかけてきます。こうした外国語を学ぶ上でのマインドの違いが、ベトナム人は英語をよく喋るという私たちの認識に繋がっているのかもしれません。
ところで「ほとんどの小学校では英語が第一言語として指定されている」と前述しましたが、実は他の外国語を第一言語として学ぶ場合もあります。その中で日本語も徐々に小学校・中学校といった義務教育でも学ばれるようになってきています。次の章ではベトナムにおける日本語の普及について解説していきたいと思います。
3.ベトナムでは英語だけでなく日本語も浸透している?
実はベトナムでは、2007年から中学校で日本語クラスを選択できるようになっています。そして2016年に、小学校でも学べるようになっています。では実際にどれくらいのベトナム人が日本語を学んでいるのでしょうか。以下の表は独立行政法人国際交流基金より引用したもので、2018年に実施されたベトナムにおける日本語教育調査の結果です。
(引用元:独立行政法人国際交流基金)
<https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/area/country/2019/vietnam.html>
表を見ると、小学校の段階ではまだあまり浸透していないことがわかります。制度導入から日が浅く、授業体制が整っていないので、そもそも日本語を選択できる小学校がまだ多くないのが現状です。割合として最も多いのは学校教育以外での学習ですが、これは日本で実施している技能実習制度の影響が大きいと考えられます。また現在多くの日系企業がベトナムに進出しているため、そういた日系企業で働くベトナム人社員が社会人向けの日本語学校等に通う場合も多いです。
表の調査では、ベトナムにおける日本語学習者は約17万5,000人となっていますが、これは世界6位の数字です。そして2015年から2018年までの日本語学習者の増加率は、世界1位と言われています。今後さらに日本語学習者が増える可能性は高いでしょう。
ここまででベトナムにおける英語と日本語の普及について解説してきました。では結論として、ベトナム人と仕事をする時は何語で話せば良いのでしょうか?
4.結論、ベトナム人と話すときは何語が良い?
結論として、ベトナム人と話す・仕事をするときは基本英語で良いです。統計的にも筆者の感覚的にも、英語話者・学習者の方が多いからです。もしあなたが高度な業務でベトナム企業と仕事をするなら、相手のベトナム企業にはきっと英語を話せるベトナム人スタッフがいると思います。
しかしながら、ベトナム人にとっても日本人にとっても英語は第二言語です。仕事のコミュニケーションを進めるうちに低くない確率で齟齬が生じるでしょう。日本人側にとって最も有効な方法は、日本語が話せるベトナム人を参加させることです。そうするとお互い母国語でやりとりできます。仮にそのベトナム人の日本語にミスがあっても、日本語ネイティブであれば違和感に気づき確認が取れるでしょう。現在日本語を話せるベトナム人はそう多くないですが、仕事で正確なコミュニケーションがとりたいのなら、間違いなく最もおススメできる方法です。