ベトナムってどんな国?
ベトナムは東南アジアのインドシナ半島の東部に位置しており、西側はラオス・カンボジア、北側は中国と国境を接している。北は中国、西はラオスとカンボジアの国境、東は南シナ海と接している。
ベトナムの首都
ベトナムの首都はハノイである。経済的には旧南ベトナムの首都サイゴン(現ホーチミン市)が中心とされているのに対し、ハノイは政治・文化の中心であると言われる。
ベトナムの人口
ベトナムの人口は9,851万人(2021年時点)である。特に若い年齢の人口が多いことで知られており、人手不足の日本企業がベトナムから人材を呼び寄せるケースも多い。ベトナム政府によると、2025年までに人口は1億人を突破する見込みである。
ベトナムの面積
ベトナムの国土面積は約331,236km2である。日本の国土面積が約377,972km2であるので、日本よりやや狭い程度の面積である。
ベトナムの民族
ベトナムは54の民族からなる多民族国家である。その中でもキン族が8割以上を占める。その他にも、中華系のホア族(華僑)、高地に住んでいるモン族などが知られている。
ベトナムの気候
ベトナムの気候は大きく北部と南部で分かれている。
北部
北部の気候は亜熱帯性気候で、日本と同じように四季がある。そのため年間の気温差が激しく、夏は40℃を超える日も珍しくない一方で、冬は10℃以下まで気温が下がる。
南部
南部の気候は熱帯モンスーン気候で、乾季(11月~4月)と雨期(5月~10月)に分かれる。1年間を通じた平均気温は27℃で、4月~5月が最も暑くなるものの、年間を通じて気温は一定である。そのため、時期によっては35℃を超える日があるものの、ハノイほどの気温差はなく、年間を通じて過ごしやすい気候である。
文化
服装
ベトナムの伝統的な正装として「アオザイ」があり、学校の入学式・卒業式や結婚式などのパブリックな場で着用される。また、学校の教師などもアオザイを着用している場合が多い。しかし、日常生活の場では洋服を着用している。特に若者の間では韓国式のファッションが流行っており、韓国ブランドの服もよく売れている。
食文化
ベトナムは稲作が盛んな歴史があり、現在でもベトナム人の主食は白米である。またベトナム料理として有名なPho(フォー)の麺も米から作られている。また地域によって味の好みが違うことが知られており、北部地域は日本と同じく塩味が好まれ、中部は辛い味、南部は甘い味付けが好まれている。
言語
ベトナムの公式言語はベトナム語であり、ローマ字と声調記号によって表示される。20世紀までは、ベトナムでもチュノム(字喃)と呼ばれる漢字が使用されており、漢文文化であった。そのため、現在はローマ字で表記されているベトナム語の中にも、漢字由来の言葉(漢越語)が8割を占めると言われている。
しかし、20世紀後半から、フランス人宣教師によってもたらされたローマ字表記のベトナム語(クオックグー)が広がり始め、1945年のベトナム統一の際に、正式な公式言語としてクオックグーが採用された。
暦
ベトナムでは日本と同じ陽暦とともに、陰暦(旧暦)も採用されている。例えば日本の正月は1月1日であるが、ベトナム人にとっての正月は日本の2月初旬である。ビジネスにおいても、2月初旬はベトナム全体が旧正月の休暇に入るため、その時期はベトナムの仕事は進まなくなることに注意が必要だ。
ベトナム経済の成長率
これまでのベトナム経済の成長の軌跡
ベトナムは1986年からの「ドイモイ政策」により社会主義市場から資本主義市場への転換が行われ、一気に経済成長が進んだ。そのため、1990年代は高い成長率を維持し、一人当りのGDP が徐々に増加した。2014年には一人当たりGDP が2,000USDを超えて、1990年に比べて、約20倍となった。
ASEANへの加盟
ベトナムは1995年7月28日に東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟した。加盟後、ベトナムは積極的にラオス、カンボジア、ミャンマーのASEANへの加盟を促進した。ASEAN加盟を契機にして、ベトナムは国際経済と深い繋がりを持つことができ、多くの「ASEAN+地域」の協力メカニズムやASEANを中心とした地域自由貿易協定(FTA)に参加することができるようになった。
WTOへの加盟
ベトナムは1995年1月4日からWTO(世界貿易機関)への加盟申請を行った。WTOへの加盟には加盟国との二国間協議、および多国間協議が必要とされ、実際の加盟までには12年間もの年月を要したが、ベトナムは2007年1月11日をもってWTOの正式加盟国となった。
WTOの二大原則は「最恵国待遇」および「内国民待遇」。つまり、WTO加盟国すべてを輸出入において平等に扱い、さらに国産品と輸入品を同等として扱うことが求められる。これにより、ベトナムがグローバルな自由貿易のネットワークに参加することが可能となった。
2021年の経済動向
新型コロナウイルス
新型コロナウイルスの感染拡大前の数年間はベトナムは年7~8%のGDP成長率を維持してきていたが、新型コロナウイルスの影響により、2021年のGDP成長率は2.58%であった。これは直近30年間の中で最も低い成長率となる。
感染拡大政策の一貫として大規模な外出制限、移動制限が行われたため、工場等の製造拠点の稼働ができなくなり、また消費も落ち込むこととなった。また輸出入もストップしたため、製造のために必要な原料等の調達もストップしてしまったこと等が原因であった。
新型コロナウイルスからの回復
しかし、新型コロナウイルスのワクチンが開発されると、徐々にベトナムでもワクチンが普及しはじめ、現在ではほとんどの国が3回以上のワクチン接種を行っている。ワクチン接種率の向上とともに、ベトナム政府も徐々にコロナに関する規制緩和を始め、2022年現在では、ほぼコロナ以前の経済活動を取り戻している。また外国人の入国制限もほぼ撤廃されている。
2022年のベトナムGDP成長率
2021年の年末時点では、2022年のベトナムの経済成長率は6.5%となると予測されていた。しかし実際には2022年第2期(4~6月)のGDP成長率は7.72%と予測を大きく上回る数値となった。これは新型コロナで抑制されていた生産活動が、コロナからの回復によって反動で大きく成長したこと等が理由として考えられる。
2022年第3期、第4期でもこの成長を維持すると考えられている。
2023年のベトナムGDP成長率
2023年のベトナムのGDP成長率は、アジア開発銀行によると6.7%と見込まれている。しかし2022年の成長率が予測を上回ったように、2023年もより高い成長率が期待される。
ベトナムに進出する日本企業
日本貿易振興機構(JETRO)の公開情報によれば、現在ベトナムに進出している日本企業数は1,985社となっており、製造業に中心であるが、その他にも不動産開発、小売・卸売等への投資が多くなっている。
ベトナムに進出している代表的な日本企業としては、キヤノン、パナソニック、ホンダ、トヨタ、富士通、日本電産、ブリヂストン、富士ゼロックス、マブチモーター、イオン、ファミリーマート等が挙げられる。
新型コロナウイルスの影響
新型コロナの流行が始まって以来、ベトナムは大きく感染拡大の4つの波があった。 特に第4波は最も深刻で、2022年3月頃には一日の感染者数が30万人を超える事態となっていた。
新型コロナに対するベトナム政府の対応
新型コロナウイルスのワクチン接種がまだ始まっていない初期の段階では、ベトナム政府は厳しいコロナ感染防止策を徹底していた。例えばある場所でコロナの感染者が発生した場合、その地域のすべての住民にPCR検査を強制したり、当該地域を閉鎖(ロックダウン)したり等の対策が見られた。
しかし、新型コロナワクチンが普及し始めてからは、これまでの厳しい対策から一変し、今では自由な生活・経済活動ができるようになっている。
これまで新型コロナワクチンを3回接種した人口は7,960万人で、これは人口の81.7%に当たる。日本での3回目接種の割合が61.7%を踏まえると、非常に高い割合の人口がワクチン接種を行っていることが分かる。
中国・アジア諸国との経済成長率の比較
ベトナムは2000年台からコロナ感染拡大の時期を除いて非常に高いGDP成長率を維持している。現在は、アジア諸国の中で中国に次ぐ2番目の成長率であるが、国際通貨基金(IMF)の予測によると、2022年以降はベトナムがトップとなり、平均6.0~6.2%の成長率を維持すると期待されている。
ベトナムと米国との関係
ベトナムと米国は、以前は戦争の敵国同士であったが、1995年に国交が回復して移行は、ベトナム・米国間の経済的・文化的結びつきは非常に強くなっている。
ベトナムと米国間の双方向の貿易売上高は1995年の451MilUSDから2020年の90.8Bil USDへと増加した。またアメリカはベトナムの直接投資を行う金額で11番目の国であり、2019年にベトナムに2.6Bil USDを投資した。2021年10月までを累計すると、アメリカはベトナムに9.72Bil USDの直接投資を行っており、1,134案件を展開している。
日越関係
1973年9月21日に日本とベトナムは外交関係を樹立した。その後、「アジアの平和と繁栄のための広範な戦略的パートナーシップ」の下、政治や経済、文化等の幅広い分野にて、両国の関係は今もなお発展を続けている。
現在、日本はベトナムに対して、中国、米国、韓国に次ぐ第4位の貿易相手国である。2021年のベトナム・日本の貿易額が約427億ドルと、初めて400億ドル台に到達した。2021年、ベトナムから日本向けの輸出総額は、約201億3,000万ドルを達し、前年に比べて4.4%増加した。一方、ベトナムの日本からの輸入総額は、約226億5,000万ドルとなり、前年に比べて11.3%増加した。
ベトナムの投資計画省によれば、日本は対ベトナムFDI の第2の投資国である。2021年11月時点で、日本はベトナムにおいて4.792案件を展開しており、総投資額が64.2Bil USDに達している。これはベトナム全体のFDI投資額の16%を占めている。また、日本はベトナムに対する最大の開発援助(ODA)国であり、累計金額は23.76Bil USDに達している。これらの資金はベトナムの社会経済インフラの整備、および貧困の削減に大きく貢献している。
外国企業のベトナム投資動向
ベトナムへのFDI は2010年から2019年まで年々増加している。2020年、コロナ渦の影響により、FDI認可額が2019年に比べて、20%減少したものの、海外投資における中国リスク回避(チャイナ・プラスワン)の影響により、大きな減少とはならなかった。
ベトナムは海外企業にとって最も有望な投資市場の一つであると評価されている。SamsungやApple等の大手企業も生産拠点をベトナムに移しており、今後も大規模な投資が継続して行われると予想される。
業種別・国別のFDI認可額
業種別に見ると、ベトナムの製造業へのFDIが55%以上を占める。また2番目のセクターはライフラインであり、23%を占める。投資国・地域を見れば、ベトナムに最も多く投資したのはシンガポールである。次いで韓国と中国となり、日本は第7位であった。
日本企業
日本企業によるベトナムへのFDI投資額も年々増加傾向にあったが、2019年は案件数は増えたものの、金額は減少した。
最近のトレンドとして、案件数は増えているが、1件あたりの投資金額が小さい、中小規模の案件が増えている傾向がある。これは、これまでは大手企業がベトナム進出の大部分を占めていたが、徐々に中小企業による投資が増えてきたことを意味する。
貿易動向
ベトナムの2010年〜2020年 輸出額・輸入額の推移
ベトナムの輸入額・輸出額が年々増加している。2010年と比較すると、2020年の輸出額は4倍近く、輸入額がは3倍近くまで増加した。
ベトナムの2020年の主要輸出入品目
ベトナムの主な輸出品目の特徴としては、木材・木製品および水産物などの原料の輸出が多いことである。近年は電話機の部品やコンピューター部品の輸出も増えており、第二次産業の品目の割合が増えている。
一方で輸入品目も、輸出品目と同じく電話機部品やコンピューター部品が上位を占める。これは、部品を仕入れ、ベトナムで組み立てて完成品を輸出するという形のビジネスが増えているためであると考えられる。
輸出品目 | 輸出金額(Mil USD) | 輸入品目 | 輸入金額(Mil USD) |
---|---|---|---|
電話機・同部品 | 51,184 | コンピューター電子製品・同部品 | 63,971 |
コンピューター電子製品・同部品 | 44,576 | 機械設備・同部品 | 37,251 |
縫製品 | 29,810 | 電話機・同部品 | 16,645 |
機械設備・同部品 | 27,193 | 織布・生地 | 11,876 |
履物 | 16,791 | プラスチック原料 | 8,397 |
木材・木製品 | 12,372 | 鉄鋼 | 8,067 |
輸送機器・同部品 | 9,091 | プラスチック製品 | 7,275 |
水産物 | 8,413 | 金属類 | 6,053 |
鉄鋼 | 5,258 | 化学製品 | 5,741 |
糸 | 3,737 | 繊維・皮原材料 | 5,381 |
合計(その他含む) | 282,655 | 合計(その他含む) | 262,701 |
ベトナムの2020年の主要な輸出入の相手国
輸出相手国の第一位は米国である。米国向けの輸出のほとんどは電話機部品であり、スマートフォンの部品がベトナムで組み立てられて米国へと出荷されている。
一方で輸入相手国の第一位は中国であり、主に組み立て前の部品がベトナムへと輸入されている。
最後に
今回はベトナムのGDP成長率を中心として、ベトナムの現在の経済状況、および新型コロナウイルスの影響と回復状況を概観してきた。特にコロナ収束の見通しが立ってきた2022年、これまで以上にベトナム経済の発展が期待される。
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