はじめに
日本企業はベトナム市場でビジネスを展開する際に、現地企業であるベトナム企業と良好なパートナーシップの関係を築けるか否かが、ビジネス成功のカギとなる。良好なパートナーシップを築くためには、ベトナム企業が日本企業に対して何を求めているのか、ベトナム企業の価値観等を理解することが不可欠だ。今回はビジネスにおいて、ベトナム企業が日本企業に期待するポイントを5つ紹介していきたい。
日本企業の対応・意思決定が遅い
ベトナム企業と日本企業との間の協業において、現地企業と日本企業の決定スピードのギャップが生じている傾向が良く見られる。そうした中でベトナム企業は日本企業の決定スピードを早めてほしいという期待がある。
ベトナムは発展途上国であり、大企業から中小企業までを含めてほとんどのベトナム企業は、日本企業と比べると若く、ベンチャー企業のような即断即決で事業を行っているパターンが多い。 さらに、ベトナム企業における決定はトップダウンの形で行われているため、意思決定が早く、かつ計画や使用の変更に対して柔軟に対応できるという特徴がある。
一方で日本の、特に大企業では、企業としての決断がボトムアップで行われることが多く、その過程で何回も稟議・承認を得る必要がある。そのため、日本企業は意思決定が遅く、ベトナム企業を待たせてしまうパターンが多い。
とはいえ、国外の市場においてビジネスに大きく影響するような決断を迅速に下すのは難しい。その場合は、ベトナム市場・ビジネスについて深く理解しているコンサルティング会社等から知恵を借りながら、意思決定の迅速化に努めることも有効な手段だろう。
日本企業の価格設定はベトナム市場に合っていない
日本企業がベトナム市場向けに製品販売を行っている中で、なかなか成約に至らない原因の多くが価格設定であるケースが多い。企業を含めたベトナム市場は、日本製品の品質を非常に高く評価しているものの、日本企業の価格提案が現地の需要からかけ離れている場合、交渉が先に進まなくなってしまう傾向がある。
それに比べて中国、インド、台湾の企業が販売する製品は価格が安い。品質の面では日本企業の製品を高く評価しているものの、価格とのバランスを考えた場合、ベトナム企業がそうした中国、インド、台湾等の製品を選んでしまうパターンが多い。
大半のベトナム企業は成長段階にあり、可能な限り生産コストを抑えることに注力しているそのため、日系ナムはベトナム市場に販売を拡大するにあたって、現地企業が想定する価格レベルを理解することが必要である。
日本のビジネスの常識はベトナムでは通用しない
国境を越えたビジネスは、本質的に文化や常識の違いによる多くの課題に直面するのは通常である。例えば日本企業では「社内秘情報」と考えられている情報が、ベトナムでは当然公開されるべき情報であると捉えられており、いざベトナム企業が情報公開を求めた場合に日本企業側で対応に苦慮するというケースがある。全てをベトナム企業側のルールに合わせる必要はないが、頑なに日本のルールを押し通すのではなく、ちょうど良い妥協点を探るための姿勢をベトナム側に見せることが、信頼の獲得に繋がる。
状況に合わせて計画を修正していく柔軟さが必要
日本企業がプロジェクトを進める際には、最初の段階で十分な情報を基に計画を立て、それに基づいてプロジェクトを進めることが望ましいとされている。一方でベトナム企業では、もちろん計画は立てるものの、あくまで指標としての計画であり、ビジネス環境の変化や法規定の改定等の外部要因、また社内での人の異動等の内部要因により計画が頻繁に変わることを、ある程度プロジェクトが始まる段階で織り込んでいる。この場合のメリットは、計画立案からプロジェクト着手までのスピードが速く、後から柔軟な変更が可能である点である。
特にベトナムでは、外部要因による環境の変化が起きやすく、これはベトナムビジネスの特徴の1つであるとも言える。そのため、日本企業も「完璧な計画」にこだわりすぎることなく、後から臨機応変に計画を変更する柔軟性を持つことが必要だ。
日本企業はもっと積極的に自社のPRをすべき
現在、日本はベトナムの総投資資本で2番目に大きい国である。しかしB2BやB2Bセグメントにおいては日本企業の知名度は高くない。この背景には、日本企業がベトナム市場においてPR活動を十分に行えていないことがある。
日本企業のPR活動においてよく見られる課題は、日本国内で行っているPR活動と同じ手法をベトナム市場にも持ち込んでいることである。コーポレートサイトのデザイン、広告の流し方、口コミの広め方は日本市場とベトナム市場では大きく異なっている。市場の違いを理解して、適切なPRを行っていくことが必要である。
結論
上記の5つのポイントはONE-VALUE株式会社が多くの日系企業クライアントをベトナムへの進出を支援するにあたって、ベトナム企業からヒアリングした意見をまとめた結果である。このような現地企業の期待を理解することが、日系企業がベトナムでうまくビジネスを行うために重要な最初のステップだろう。
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