はじめに:PDP8の策定とDPPA制度
日射量の条件が良いベトナムでは、ベトナム政府によるFIT制度(固定価格買取制度)が導入された2019年以降、地上設置型を中心に民間企業による投資・開発が進められてきた。
この記事では2022年以降の長期的な見通しについて太陽光発電の市場動向を全体的に解説してきたい。
結論としては、ベトナムの2045年までの電源開発計画を定めた第8次国家電力マスタープラン(PDP8)が適用される2022年以降も工業団地や商業施設の屋根置き太陽光発電を中心に有望な市場であり続けると考えられる。
加えて、今後はDPPA Direct Power Purchase Agreement:直接電力供給契約)の実現が期待される。DPPAとは、再生可能エネルギー発電事業者と電力使用者間の直接電力買い取り契約(DPPA)のことである。
ベトナム商工省は既に制度の試行に向けた規定の草案を公表しており、今後の太陽光発電を見通す上で最重要な点と考えられる。 また、太陽光発電のO&M(運用管理・保守点検)関連のビジネスも発展していく可能性が高い。
ベトナムの電力事情・電力市場
ベトナム太陽光発電市場の全体を見通すために、まずはベトナムの電力事情、再生可能エネルギー市場全体の動向を確認しておきたい。
ベトナムの電源構成
ベトナムの電源構成比(2020年時点)を見ると、石炭火力(43.6%)、再生可能エネルギー(21.0%)、水力(16.9%)、ガス火力(14.7%)の順序で構成比が大きいことが分かる。
ベトナムの電源構成では現状では石炭火力発電が最も大きな比率を占めており、次いで再生可能エネルギーが2番目に大きい。
再生可能エネルギーは2017年頃には僅か数%程度の規模であったが、2021年現在までに全体の2割を占めるまで拡大した。 ベトナム政府は今後、順次再生可能エネルギーの比率を高めていく開発計画を立てている。
ベトナム政府が発表したPDP8(第8次国家電力マスタープラン)草案では、ベトナム全体に占める再生可能エネルギーの比率を、2030年までには29%、2045年までには45%に引き上げるとされている。
2045年までの開発計画
ベトナム政府が計画する2030年・2045年までの電源開発計画では、再生可能エネルギー開発の積極的な方針は変わっていない。また、新規での石炭火力発電の開発の承認は原則的に行わない方針をベトナム政府は立てている。
2021年9月に公表されたPDP8ドラフトでは、ベトナム政府の電源開発の計画が記されている。
再生可能エネルギー開発のための電源設備の割合を、2030年にはベトナム全体の約2割まで引き上げ、2045年には2倍の4割以上を目指すことが明記されている。
PDP8草案によれば、2030年までに運用開始する電源容量は130,371〜143,389MWとなっており、各電源の比率は石炭火力:28.3〜31.2%、ガス火力:21.1〜22.3%、水力・揚水発電:19.5〜17.73%、再エネ:24.3〜25.7%、輸入:3〜4%となる計画だ。
2045年までの運転開始済み電源容量261,951〜329,610MWで、各電源の比率は石炭火力:15.4〜19.4%、ガス火力:20.6〜21.2%、水力・揚水発電:9.1〜11.1%、再エネ:40.1〜41.7%、輸入:3〜4%となる計画である。 石炭火力発電に依存するベトナムの現状も伺える。急速な経済発展による電力需要の増加で大型の石炭火力発電に頼らざるを得ない一面とクリーンなエネルギーである再生可能エネルギー開発の2つのベクトルの間に置かれている現状だ。
電源開発計画(電源設備の容量)
ベトナム商工省が発表した第8次国家電力マスタープラン(PDP8)の9月版ドラフトによると、ベトナム国内における電源設備の容量は2020年に47,422 MWに達し、2000年から2020年の間で年平均成長率(CAGR)は10.5%だった。PDP8によれば、2035年までにベトナム国内の電源設備容量は143,389MWに達し、2045年には329,610 MWに達すると予想される。2020年から2045年の期間の年平均成長率(CAGR)は10.18%となる見通しだ。
太陽光発電市場の動向と見通し
ベトナム政府が電力需要の増加といった環境のなかで再生可能エネルギーの開発を積極的に進めていることを確認した上で、次にベトナムの太陽光発電に焦点を当てて分析していきたい。
ベトナム太陽光発電市場の最大の課題は送電線の不足に伴う出力抑制とFIT制度に代表される法規定の立て付けである。
日射量
東南アジアの中で比較すると、ベトナムは日射量の条件が良好な国の1つである。
東南アジア諸国と比較して、ベトナムの太陽光発電開発に適する土地面積は、タイ、ミャンマー、カンボジアに次ぐ第4位の規模である。ベトナムで太陽光発電開発に適する土地面積は約79,000平方キロメートルと推定される。
ベトナムは国土の中部から南部にかけて、太陽光発電発電に適した日射量に恵まれている。特にビントゥアン(Binh Thuan)省とニントゥアン(Ninh Thuan)省は日射量の条件が良いため、多くの太陽光発電プロジェクトが集中している。
これらの一部の地域では、送電線の容量不足といった問題も生じており、ベトナム電力公社(EVN)による出力制御も想定されている。
出力抑制・系統制約については十分に留意する必要がある。
上記はアメリカ国立再生可能エネルギー研究所が公表する東南アジアにおける日射量マップであるが、ベトナムは中部から南部にかけて日射量が多いことが分かる。
東南アジア諸国と比較したベトナムの太陽光発電
ベトナム政府の太陽光発電に関する開発目標はタイやフィリピン、インドネシア、フィリピンと比較しても見劣りしていない。
今後10年間におけるベトナム政府の太陽光発電の開発目標は、タイ・インドネシアの2倍で、フィリピンの10倍程度を目標として設定している。ベトナムの太陽光発電は日射量等の自然条件に恵まれただけでなく、それを活かそうとする政府の積極性という2つの要素によって成り立っている。
高価なFIT価格により、ベトナムの太陽光発電容量は4,460 MWに達し、タイ(2,753 MW)、フィリピン(992 MW)、インドネシア(80 MW)をはるかに上回っている。
太陽光発電の開発計画
ベトナム政府の発表によれば、2045年までに太陽光発電の設備容量は2020年の3倍以上になる見通しである。
第8次国家電力マスタープラン(PDP8)の9月版草案では、再生可能エネルギー(水力発電を除く)の総容量は現在の約17,000MWから、2030年には31,600MWになると計画されている。
そのうち、太陽光発電は18,640MWで約60%を占める計画で、2045年までには55,090MWに達し、石炭火力発電の容量を超えるとされている。
FIT制度・FIT価格
2021年に商業運転開始する太陽光発電プロジェクトは2021年11月時点では不明確となっている。今後は設置形態に応じたFIT価格の引き下げ、又は入札制度への移行がベトナム政府内では検討さえているものの、正式なベトナム政府のアナウンスはない現状である。
太陽光発電のFIT価格(固定電力買取価格)は、2019年6月30日を期限に9.35セントという現在よりも高い価格が設定されていた。その後、9カ月以上価格が定まっていない状態が続いていた。
2020年4月6日、太陽光発電開発の奨励に関する首相決定13号(No.13/2020/QD-TTg)により、太陽光発電のFIT価格が改定された。
設置場所ごとに価格が異なり、地上設置型は1キロワット時(kWh)当たり1,644ドン(7.09セント)、水上設置型は1,783ドン(7.69セント)、屋根置き型は1,943ドン(8.38セント)と定め、20年間適用されることが正式に決定された。
期限としては、2019年11月23日より前に承認を受け、2019年7月1日から2020年12月31日に商業運転を開始するプロジェクトが対象と設定された。
一方で、2021年以降については新たな規定が出ていない状況だ。現地報道の記事によれば、入札制度が適用される可能性が高い。 地上設置型については商業運転開始(COD)後に売却する投資家もベトナムでは多い。ベトナム政府はFIT制度を活用した案件の売却の動きを歓迎していない。地上設置型では入札制度が導入され、屋根置き型太陽光発電についてはFIT価格引き下げの見通しが強まっている。
入札制度
入札制度の仕組みについては、次の2つの案が提出されており、政府内で議論されている。1つ目の案が、省や地域といった地理的区分で企業が入札を行う案。2つ目の案が、変電ステーションごとに接続する企業同士で入札を行う案である。
1つ目の案の場合、省といった地理的区分に位置する発電所同士で入札を行うことになり、その地理的区分に属する全ての企業が参加することになる。
一方、2つ目の案では地理的区分に関係なく、接続箇所が同じである発電所同士で入札を行うことになる。
太陽光発電の開発状況
2020年12月末のFIT制度の期限を前に企業による開発が駆け込みで相次いだ。ベトナム電力公社(EVN)の発表によれば、2020年12月末時点でベトナムの商業運転開始済みの太陽光発電の設備容量は9GWを超えた。
以下のグラフは2020年12月までの月次での太陽光発電の設備容量の推移を表しているが、11月から12月の約1ヶ月で5GW程度も系統接続している。 こうした開発の手法が送電線の不足、出力抑制に関わっているものと考えられる。
太陽光発電に関する法制度
外資規制
ベトナムで発電事業を展開する上での外資規制は存在しない。
ベトナム政府が発行した「2020年投資法」(2021年1月1日発効)によると、外国人投資家(日本を含む)は、発電プロジェクトへの投資を規制されていないが、送電、配電では外資規制が存在している。
発電事業においては外資規制が存在しないため、参入可能である。独立系発電事業者(IPP:Independent Power Producer)のケースが殆どである。
配送電・小売事業では外資系企業は参入付加である。ベトナム電力公社(EVN)の垂直統合となっている。
太陽光発電に関する優遇制度措置
ベトナム政府は民間企業・投資家による太陽光発電への投資を促すための奨励政策・優遇措置が設定されている。
主には法人税、輸入税、付加価値の免税・減税である。法人税の優遇措置の内容は複雑であるため、留意が必要である。
法人税
商工省通達(No. 78/2014/TT-BTC)に準ずる。事業内容や設立地域の性質に応じて、10%もしくは20%の優遇税率が一定期間適用。また、4年間免税・その後9年間50%減税、4年間免税・その後5年間50%減税、もしくは2年間免税・その後4年間50%減税が適用される)。また、農村部等、政府が定める「経済・社会的に困難な地域」では法人税の優遇税率が一般の地域と比較して更に優遇される。
輸入税
固定資産となる設備を製造するための製品に対する輸入税を免除する。ここでの輸入製品とは、現地で生産されていない材料、資材、および半製品を指す。
土地賃貸税
電力案件、電力系統接続と変電所工事のための土地使用とリース代を減免できる。この土地賃貸税については省級人民委員会が土地収用の保障と補助を行う。
地域や省によって、土地賃貸税の免税を受けられ、建設中の土地の賃貸(土地賃貸契約締結から最大3年間)や建設完了後など状況・条件によって異なるが、追加で11~15年間免税出来る場合もある。
付加価値税(VAT)
プロジェクトの建設中に発生した費用にかかる仕入れ付加価値税は、発電所が商業運転を開始した後に還付される。
送電線の開発状況
ベトナムでは、送電線の開発が増え続ける電力需要に追いついていない状況が続いている。
日射量がよく、風況も良いはニントゥアン(Ninh Thuan)省やビントゥアン(Binh Thuan)省等の日射量条件が良好である地域では短期間で大規模に太陽光発電が開発されたため、一部の地域で送電線の過負荷を起こした。
そのため、国全体の電力は不足しているが、これらの地域にある発電所は全容量を発電することができない。ベトナム電力公社は出力抑制に関する情報を公表しているが、ニントゥアン(Ninh Thuan)省やビントゥアン(Binh Thuan)では頻繁に出力抑制が行われているため、投資家にとっては売電ができず、大きな機会損失となってしまう。
2020年のある時点では、全国に89ヶ所の風力・太陽光発電所があり、総設備容量は4,543 MWであった。そのうち、ニントゥアン省とビントゥアン省には38ヶ所の風力・太陽光発電所があり、総設備容量は2,027MWであった。
ニントゥアン省、及びビントゥアン省自体は電力需要が大きい地域ではない。発電した電力の大部分を他の地域へ送電しなければならず、送電線の需要は高い。そもそも、ベトナムのFIT制度は非常にタイトな適用期限が設定されるため、短期間で発電所が乱開発に近い形で開発されてしまう。そのため、送電線の容量を度外視した発電所開発が進んでしまう傾向がある。
太陽光発電に関するプレーヤー:ベトナム電力公社(EVN)
太陽光発電に関わる主要なプレーヤーとして、ベトナム電力公社(EVN)についても解説したい。
ベトナム電力公社(Vietnam Electricity Group、略称:EVN)は、ベトナム最大の国営の電力会社である。 ベトナム電力公社(EVN)は、1994年にベトナム政府によって国営企業として設立され、2010年から正式に有限責任会社として運営されている。
EVNは、独自の大規模水力発電所と石炭火力発電所を運営しており、総設備容量は28,169 MWである。
3つの発電子会社(GENCO 1、2、3)を管理しながら、ベトナムの発電において最大58%のシェアを占めている。 そのほか、1つの送電会社(National Power Transmission Corporation-EVNNPT)、および5つの地域配電会社(北部、中部、南部、およびハノイとホーチミンの2つの大都市各地)を所有している。
代表的な太陽光発電案件
次に代表的なベトナムの太陽光発電について紹介していきたい。
ベトナム企業が主導する太陽光発電案件
Trung Nam Thuan Bac太陽光発電
Ninh Thuan(ニントゥアン)省で開発された450MW規模のメガソーラーである。
Trung Nam Thuan Bac太陽光発電所は、2020年10月12日に、ニントゥアン省トゥアンナム地区で運転開始された。これは、Trung Nam(チュンナム)建設投資会社(チュンナムグループ)が投資した太陽光発電所である。
Trung Nam Thuan Bac太陽光発電所の基本情報:
- ベトナム最大太陽光発電所
- 容量:450 MW
- 総投資額:12兆ドン (5億4550万USD)
- 建設面積:557.09ヘクタール
- 建設期間:102日
- 建設に携わる職員、技術者、労働者の数:8,000人
- 使用するソーラーパネルの数:140万枚
- このプロジェクトは初めて民間企業が建設した送電線のある変電所である。 500 kV、220kV等の送電線は17km以上の長さで、ニントゥアン省トゥアンナム地区からビントゥアン省トゥアンナム地区までつながっている。
- 毎年、Trung Nam Thuan Bac太陽光発電所は10億kWh以上の発電量を供給でき、ニントゥアンと南中部沿岸の送電網容量の増設に貢献する。
Dau Tieng太陽光発電所
Dau Tieng DT1およびDT2太陽光発電所クラスターは、国内で2番目に大きな容量の太陽光発電所である。Dau Tieng DT1およびDT2太陽光発電所クラスターは、Xuan Cau Company(ベトナム)とB. Grimm Power Public Company(タイ)が共同で、ベトナム南部にあるDau Tieng湖の半水没した土地に投資していた。
2019年6月には国家送電網に接続し、同年9月に正式に運営が開始された。
Dau Tieng太陽光発電クラスターの基本情報:
- 容量:420 MW
- 総投資額:9兆1,000億ドン (4億1360万USD)
- 建設面積:504ヘクタール
- 運営開始後、Dau Tieng太陽光発電クラスターは、国家送電網に毎年6億8800万kWhの電力を送電していると推定されている。 その結果、特にタイニン省の電力需要全体と南部地域の電力需要の一部が満たされている。
日本企業が関わる太陽光発電案件
日本企業がEPC又は投資家として関わる太陽光発電も数多く存在している。
シャープ株式会社
シャープエネルギーソリューション株式会社はベトナムの発電事業者Viet Nam Viet Renewable Energy Joint Stock Company※、ベトナム現地工事会社NSN Construction and Engineering Joint Stock Company他と共同で、ベトナムのビンディン省(Binh Dinh)に太陽光発電所を建設しました。
シャープ株式会社に公表情報によれば、出力規模は約50MW-dcで、年間予測発電量は約82,506MWh/年とのことである。これはベトナムの標準的な家庭の約43,700世帯分の年間消費電力量に相当するという。
出光興産株式会社
出光興産は2020年1月に、ベトナムで太陽光発電を開始すると発表している。ビジネスモデルとしてはベトナム現地企業の工場の屋根に太陽光パネルを設置し、2022年から発電するモデルである。
発電容量は2MWで、太陽光パネルを設置する工場に販売する。出光興産のモデルでは固定価格買い取り制度(FIT制度)を活用せず、電力を需要家に直接販売するビジネスモデルで、将来は他の企業や他国にも広げる方針を掲げている。
補助金制度・JCM制度
環境省では、二国間クレジット制度(JCM)を通じた環境インフラの海外展開を促進しているが、2021年度のJCM制度でも多くのベトナムでの案件が採択されている。
公益財団法人地球環境センターによれば、2021年度中に採択されたベトナムの案件は以下の通りである。
- JFEエンジニアリング株式会社:バクニン省における廃棄物発電
- 電源開発株式会社:ハウザン省における10MWもみ殻発電プロジェク
- シャープエネルギーソリューション株式会社:工場群への9MW屋根置き太陽光発電システムの導入
- 株式会社遠藤照明:ホーチミン市内オフィスビルへの調光調色型高効率LED照明の導入
- 丸紅株式会社:商業・産業需要家への12MW屋根置き太陽光発電システムの導入
- 大阪ガス株式会社:工業団地への9.8MW 屋根置き太陽光発電システムの導入
- アジアゲートウェイ株式会社:飲料工場への 5.8MW 屋根置き太陽光発電システムの導入
- 関西電力株式会社:食品工場及び衣料品製造工場への2.5MW屋根置き太陽光発電システムの導入
- 東急株式会社:ショッピングセンターへの高効率チラー及び調光型高効率LED
こうしてみると、ベトナムでの採択案件は屋根置き型太陽光発電の案件が割合として多いことが伺える。
今後の成長性・ビジネスチャンス
最後にベトナム太陽光発電の2022年以降の見通しについても述べておきたい。
屋根置き太陽光発電の発展
工場や工業団地での屋根置き太陽光発電のモデルは今後も拡大すると考えられる。
ベトナム政府は、用地やインフラ整理を多く必要としない屋根置き型太陽光発電(Rooftop)を継続的に普及させるため、屋根置き型太陽光発電のFIT価格を来年2021年も維持すると予測される
住宅の屋上での太陽光発電の開発に加えて、工場や工業団地での屋上太陽光発電も大きなポテンシャルを秘めていると評価されている。
ベトナム政府は、このモデルをサポートするために、直接電力供給契約(DPPA:Direct Power Purchase Agreement)を実験しており、これはベトナムの太陽光発電業界の将来のメカニズムでもあると予測されている。
日本企業がベトナム現地での脱炭素を進める上でも費用対効果が高いと見ている。
直接電力買取契約(DPPA)
ベトナム政府内で直接電力買い取り契約(DPPA)の正式な導入に向けて議論が進んでいる。従来のベトナム電力市場では、ベトナム電力公社(EVN)が唯一の電力購入者となる取引のみが想定されていた。しかし、DPPA制度が導入されれば、電力事業者は電力需要者に対して直接買い取り契約を締結することができる。
2020年4月、ベトナム商工省は、再生可能エネルギー発電事業者と電力使用者間の直接電力買い取り契約(DPPA)制度の試行に向けた規定の草案を公表し、意見を求めた。既に試験的な動きも始まっている。
DPPAにより、国家送電網に接続された太陽光発電プロジェクトを有する事業者を対象に、産業用需要家との間で直接電力供給契約を締結することも可能になる。現時点では正式な決定は出ていないものの、今後のベトナム太陽光発電はFIT制度の延長、またはDPPAの導入により、発展が続いていくものと考えられる。
サムスン電子によるDPPA制度の動向
サムスンベトナムグループはEVNを経由せずに、再エネ発電事業者から直接電力を購入することをベトナム政府に提言している。
020年4月29日の現地報道によれば、サムスンベトナムグループはEVNを経由せずに発電事業者から直接電力を購入することを想定し、電力の直接購入に関する制度導入の試験実施をベトナム政府に提案した。この提案が承認されれば、サムスンはEVNを経由せずに、再エネ発電事業者から直接電力を購入することが可能になる
4月29日、サムスンベトナムグループのチェ・ジュホ事務局長は商工省大臣のグエン・ホン・ディエン大臣と会談し、その会談の中でDPPAに関するパイロット実施のおいて支援を受けることを商工省に提案を行った。
これに先立ち、商工省は2021年から2023年の期間にかけて、DPPA制度を試験的に導入する計画を立てている。この制度のもとでは、電力購入者はEVNを経由せずに、再エネ発電を行う事業者からクリーンな電力を直接購入することが可能となる。
2020年9月、元商工省大臣のトラン・トゥアン・アン元大臣は、電力規制局に対して、首相府への提出を目的として、再エネ電力購入に関するDPPA制度の草案について、関係省庁の意見をとりまとめるよう要請を行った。
商工省は、2021年から2023年の間にかけて、約400〜1,000 MWの設備容量を対象に、DPPA制度を試験的に導入し、評価を実施後、2024年から正式に適用する計画を立てている。
O&M(運用管理・保守点検)
ベトナムでは現状、太陽光発電のO&M市場は非常に小さいマーケット規模となっている。ベトナムでは運用管理や保守点検に対する考えが定着しておらず、運転開始後にすぐに売却されてしまう案件も多いことから、投資家側も重視していないようである。
運転開始後は建設を請け負ったEPC事業者が数年間はO&Mサービスを提供するようであるが、今後は発電効率の低下といった機会損失が明るみになり、O&Mサービス市場が確立していくものと考えられる。
また、太陽光パネルの廃棄に関する問題も将来的に問題となるだろう。
さいごに
ベトナムの太陽光発電は入札制度への以降、送電線不足といった課題があるものの、ベトナム政府は開発を進める方針であり、今後は工場や工業団地での屋根置き型太陽光発電に注目が集まるだろう。
また、2022年以降の太陽光発電の動向を見通す上で、DPPA制度の導入、入札制度への以降、PDP8による案件の承認といったポイントは是非抑えておきたいポイントである。
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