ベトナム人の平均賃金
2020年にベトナム統計総局が行った調査によると、ベトナム全国の平均賃金(月収)は4,249,150VND(約2万1千円)であった。これは10年前の2010年における平均賃金1,387,000VND(約6,500円)と比較すると、3倍以上の増加となり、経済発展に伴い国民の所得も増加していることが分かる。
一方で日本の平均賃金(月収)は約36万円であり、ベトナムとはまだ15倍以上の差があります。ベトナム国民全体の平均賃金はこの10年で大幅にアップしたとはいえ、まだ日本を含む賃金の高い国で働きたいと考えるベトナム人労働者は今後も増えていくと予想される。
アジアにおけるベトナムの人件費
上昇傾向にあるベトナムの人件費であるが、それでもアジア域内で比較するとベトナムの平均賃金は依然として低い。
日本貿易振興機構(JETRO)が2020年に行った調査によると、日系製造業における現地従業員の月給は、中国が531ドル、タイが447ドル、マレーシアが431ドル、インドネシアが360ドルであるのに対し、ベトナムは250ドルとなっている。
製造業における海外進出が相次ぐアジア圏で見ても、ベトナムは依然として魅力的な製造拠点であると言えるだろう。
地域別の平均賃金
国全体の平均賃金が上昇したことにより、地域別の平均賃金の格差も大きくなった。
ベトナム各都市でも平均賃金は上昇
ハノイ市、ホーチミン市、ダナン市などの各都市においても平均賃金は大幅に上昇した。ハノイ市の平均賃金は6,205,000VND(約3万1千円)、ホーチミン市の平均賃金は6,537,000VND(約3万2千円)、ダナン市の平均賃金は5,284,000VND(約2万6千円)とそれぞれ増加している。
これらの都市では農業、漁業、工場の工員といった仕事から、ITエンジニア、金融、事務職などのホワイトカラーの職種に就く人の割合が増えたため、賃金の増加幅が大きくなっている。
一方で、依然として農業・漁業が主力産業となっている地域では、賃金の増加率が2倍程度に留まっている場所もある。都市部と農村部での賃金格差が大きくなっており、特に農村部に住む若者たちが、より高い収入を求めて海外へ出稼ぎに出ていくケースが増えていくだろう。
平均賃金が最も高い地域
2020年の調査では、平均賃金が最も高い省は、首都ハノイ市やホーチミン市を抑えてビンズオン省がトップとなった。ビンズオン省はホーチミン市のすぐ隣にある省で、240万人余りが暮らしている。ビンズオン省は海外投資を積極的に呼びかけている地域としても知られており、VSIPビンズオン工業団地、ミーフック工業団地などの大型の工業団地には多くの日系企業が工場を設立している。
また、ビンズオン省では東急電鉄が現地ゼネコンのベカメックスとの合弁会社「ベカメックス東急」を設立し、「ビンズオン新都市」の開発を行っていることでも知られている。このプロジェクトは高層住宅、大型商業施設、また道路やバス等のインフラも含めた街全体を開発するものであり、すでに人口過密になってきたホーチミン市のベッドタウンとなることが期待されている。
最後に
今回はベトナムの平均賃金・人件費について解説を行ってきた。経済発展に伴い平均賃金は上昇しているものの、日本はもちろん、他のアジア諸国と比べてもまだ低い水準に止まっている。今後もベトナムへの製造拠点の設立、そしてベトナム人労働者の日本への出稼ぎの傾向が続いていくだろう。
また、都市部では平均賃金の上がり幅が大きくなっている一方で、農村地域における賃金の上がり幅は少ない。しかしビンズオン省の例にも見えるように、首都ハノイ市やホーチミン市の近隣地域では、今後多くの外国投資が行われ、経済が大きく発展する可能性がある。今後も都市部以外の地域の経済にも注目していく必要がある。
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