最近、多くの大手日系企業は海外拠点の事業を拡大させるため、ベトナムにおける現地企業を探索する動きがよく見られる。本レポートでは、日系企業のベトナムにおける合併・買収(M&A)ターゲット企業のハンティングの動向を分析する。
対ベトナム投資トレンド
近年、対ベトナム直接投資は増加傾向にある。日系企業も含めて、ベトナムにおけるM&Aは注目されている海外企業のベトナムへの進出の手法となっている。2019年度にはベトナムにおけるM&A投資額が過去最高となった。
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたにもかかわらず、ベトナムの投資新聞によると、日本の大手通信企業が買収目的でベトナムでの同業種企業を探索しているということだ。
この中に、タイに生産拠点を持つ日系企業がベトナムでソフトウェア開発、ビッグデータ・人材管理ソフトウェア開発等を手掛けるIT系企業をM&Aターゲット企業として探索しているという記載があった。
IT業界の他、再生エネルギー、製薬業界及び製造業は最も注目されている業界である。日本貿易振興機構(ジェトロ)ハノイ事務所長である中島氏によると「上記の日系企業の動きは脱中国・ベトナム投資のトレンドの一部だ」とコメントをした。
特に、新型コロナウイルス感染拡大を背景に、日本政府は日系企業に対してサプライチェーン多元化の支援としてベトナムをはじめとする東南アジア諸国へ拠点をシフトさせる活動に対する補助金等の制度を設けている。
2.ベトナム側からみたベトナム側企業のパートナー選定動向及び日本側企業のパートナー選定の動向
ベトナム側企業の日本パートナーの選定動向
ベトナム現地企業は日本のパートナーを選定する際、日本企業が強みとする技術、設備、品質管理、基準などに非常に期待し、投資金よりも生産拡大、コスト削減といった日本企業の強みを優先している傾向がある。
日本側企業のパートナー選定の動向
ターゲット企業のブランドの信頼性を優先的にバリュエーション
多くの日系企業はベトナムにおけるM&Aのターゲット企業・協力締結のパートナーを選定するにあたって、ベトナム企業と異なり、消費財産業をはじめターゲット企業のブランドの信頼性を優先的にバリュエーションしている。すでにブランドの信頼性がある現地企業であれば、キャンペーン等の広告費用と事業成長時間を短縮することができることは日系企業の評価ポイントとなっている。
流通チャネルを持っているM&Aターゲット企業も日系企業に注目されている
日系企業はベトナム市場において、日本製品の大量消費が短期的にはまだ難しいと理解しているが、長期的にはベトナムの消費市場のポテンシャルの開拓に期待している。そういう理由で、日系企業はターゲット企業を選定する際、すでに多様で認知度が高い流通チャネルを持っている企業を一つの決定的な選定条件としている。
ターゲット企業の生産能力も最も重要な選定条件の一つ
日本における生産コストが高く、さらに中国における生産拠点でも現地コストが増加している背景において、中国以外の国に生産拠点をシフトさせることは多くの企業のトレンドになると予測されている。製造業、製品加工業の企業をはじめ、ベトナム現地のターゲット企業を選定する際、買収側の日系企業はそのターゲットが持っている人材、工場、倉庫などの生産能力を反映する状況を常に検討する傾向がある。
まとめ
新型コロナウイルス感染拡大により、日本企業をはじめ多くのグローバル企業がサプライチェーン多様化を進めていく動向の中で、ベトナムは魅力的な投資先として評価されている。今後、M&Aを通じて対ベトナム投資が増えていくと予測され、現地企業のパートナー企業選定の動向を理解した上で、ターゲット企業へのアプローチを行うことがキーポイントとなると思われる。