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【ベトナム医薬品M&A案件】健康食品に強みがある元国営製薬企業

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【ベトナム医薬品M&A案件】健康食品に強みがある元国営製薬企業

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はじめに
この記事で伝えたいこと
  • ベトナムでは所得増加やライフスタイルの変化に伴い生活習慣の悪化が社会問題になっており、医薬品・健康食品の需要が増加している。
  • ベトナムの製薬会社であるX社は出資を求めている。X社は自社での原料調達やベトナム全土に及ぶネットワークなど、多くの魅力がある企業である。

はじめに

本レポートは、海外企業からの買収(M&A)を求めるベトナムの製薬会社を紹介するものである。まずベトナムにおける製薬業のポテンシャルを示し、次に件の製薬会社について紹介する。また、秘密情報の観点から、本レポートでは件の製薬会社をX社と呼称する。
本レポートを読んでX社への投資を検討したいと感じられたら、レポートの最後にあるメールアドレスまでお問い合わせ頂けると幸いである。
本レポートでは、ベトナムの疾病構造やベトナムの医薬品・健康食品市場の概要について知ることも出来るので、投資を一切検討していない方の役にも立つだろう。

ベトナムにおける健康食品市場と疾病構造

【ベトナム医薬品M&A案件】健康食品に強みがある元国営製薬企業ベトナムにおける健康食品市場

本章ではベトナムにおける医薬品・健康食品の需要と疾病構造について紹介する。ベトナムでは経済発展に伴い、多くの人々がライフスタイルを変化させてきた。その中で運動不足など生活習慣の悪化が社会問題となり、結果として医薬品・健康食品の需要が増加し、疾病構造も変化している。

ベトナムにおける医薬品・健康食品の需要

ベトナムは有望な医薬品の生産拠点として知られているが、実は消費市場としても大きなポテンシャルを秘めている。人口増加、長期的な経済発展、所得中間層の拡大や、ライフスタイルの変化による疾病構造の変化は、ベトナムという1億人規模の市場の発展を促進する要素である。例えば、ベトナムではデスクワークの増加や都市部の学校のグラウンド不足などが原因で、生活習慣病や肥満になる人が大幅に増加している。その結果、医薬品・健康食品の需要も増加している。上記のグラフは、ベトナムにおける健康食品市場の推移であり、6年連続で成長していることが見て取れる。特に2021年と2016年と比較すると、約30%成長していることが分かる。

ベトナムにおける疾病構造

WHOの発表によると、2017年までのベトナム人の疾病による死因は、脳血管疾患(18.4%)、虚血性心疾患(10.7%)、肺がん(5.86%)、糖尿病(3.8%)、慢性腎臓病(2.8%)が上位5つを占めた。特に、血管の疾患に関連する死因が高い割合を占めている。

【ベトナム医薬品M&A案件】健康食品に強みがある元国営製薬企業べトナム死因

また、ベトナムでは毎年約20万人が血管の疾患で亡くなり、18歳から65歳までのグループで、高血圧症を持つ人は最大25%である。これらのことがらと高齢者の増加を踏まえると、ベトナムの健康食品の需要は今後さらに増加すると推察できる。
本レポートで紹介するX社は、これらの疾病予防に有効とされる健康食品を製造している。

X社の基礎情報

本章では、X社について様々な要素を網羅的に紹介する。

沿革・強み

X社は元々国営企業として、1982年に設立された。X社は、医薬品・健康食品など幅広い製品の製造と流通を専門としていた。X社は、ベトナムのラムドン省で「GlobalGAP」と「GACP-WHO」の基準を満たすアーティチョークや薬草類の栽培地を所有している。X社の生産プロセスは、「GMP-WHO」、「ISO 22000:2005」などの規格に適合しているだけでなく、原材料の調達から成品の流通までの実施・管理を自社で行えることが、X社の強みの1つである。

【ベトナム医薬品M&A案件】健康食品に強みがある元国営製薬企業:図表

X社の売上構造及び所有固定資産

本章では、X社の売上構造及び所有する固定資産について紹介する。

X社の売上と利益率の推移

【ベトナム医薬品M&A案件】健康食品に強みがある元国営製薬企業:図表

X社は事業戦略転換(「流通モデル」から「製造モデル」)の過渡期にあるため、ここ数年の売上高は減少傾向にあり、赤字を計上したこともある。
特に、2018年には200億ドンの損失を記録した。その原因は、2018年の複雑な気象状況がX社の原料栽培に悪影響を及ぼしたからである。加えて2017年に、ベトナムの為替レートが連続的に増減し、X社が海外から輸入する原料の仕入れ価格が30〜40%も高騰したことも影響している。
2020年には、新型コロナウイルス流行の影響で病院に行く人が減少したため、病院からの需要も減少し、結果としてX社の医薬品流通事業の売上が大幅に下降した。また、X社のすべての製品は呼吸器関連疾患の治療やウイルス対策の機能を持たないため、新型コロナの感染拡大は追い風ではなく、反対に向かい風であると考えられる。

X社の売上構造:事業別の割合

【ベトナム医薬品M&A案件】健康食品に強みがある元国営製薬企業:図表

2017年以前、X社はベトナムの製薬会社であるOCP社、トラファコ社などが手掛ける医薬品をラムドン省やベトナムの中央部・中部高原の病院や医療施設に流通させる事業に重点を置いていた。 しかし、X社は2016年末にラムドン省で2つの医薬品生産工場の操業を開始した。独自のブランドを構築し、利益率を高めるためである。他社の製品を含めた医薬品の「流通モデル」から、自社製品の「製造モデル」に移行し、長期的な発展を目指している。

X社の売上構造:製品カテゴリ別の割合

【ベトナム医薬品M&A案件】健康食品に強みがある元国営製薬企業:図表

X社の主な製品は、健康茶、アーティチョーク葉のエキス製品など、国内で栽培および生産した健康食品である。 2020年度のX社の収益構造を見ると、X社の収益のほぼ半分を健康茶が占めている。この健康茶には、生姜茶、アーティチョーク茶、ブロッコリー抽出茶などのバリエーションがある。X社の収益構造における2番目に大きいカテゴリは、栄養・健康ドリンクである。主な製品は肝機能・皮膚の状態をサポートするドリンクと、生理機能を高める薬である。カプセル製品は、主にビタミンと野菜のサプリメントであり、収益構造の19.8%を占めている。一方、11.9%を占めるエキス製品は、ほとんどがアーティチョークの葉のエキスを使用した健康食品である。これはX社の新製品で、将来的にX社の主力製品カテゴリになることが期待されている。

【ベトナム医薬品M&A案件】健康食品に強みがある元国営製薬企業:アーティチョーク
(画像)アーティチョーク (出所)savingdinner.com https://savingdinner.com/

X社の所有固定資産

ここからは売上構造に続き、X社の所有固定資産について紹介する。

2つの大工場

X社は、ラムドン省のプーホイ工業団地に、総面積1万平方メートル以上の2の工場を所有している。これらの工場は両方とも2013年に建設され、2016年末に生産を開始し、ベトナムの中部高原地帯で最大の製薬工場である。X社の2つの工場は、世界保健機関が推奨する適正製造基準の基準(GMP-WHO)を満たすことが認定されており、「HACCP」という健康食品の安全性を示す資格も持っている。 X社の2つの工場は、年間約800トンの健康茶、360トンの薬草エキスを生産加工できる。X社の財務諸表によると、この2つの工場への投資コストは約920億ドンである。

広大な栽培地

X社は27.5ヘクタールのアーティチョークの栽培地を自社所有している。さらに、ラムドン省との協力により、X社は省内の農家と提携し、総面積約500ヘクタールの栽培地から原料を確保できる。これによりX社は医薬品の原材料確保だけでなく、中部高原地帯の経済開発、飢餓撲滅、地元住民の貧困緩和などのSGDs活動にも注目している。また、アーティチョーク栽培の平均生産量は約40〜50トン/ ヘクタール/年なので、X社は約2万トン/年の原材料を確保でき、市場の拡大に伴った生産量増加にも対応できる能力を持つと考えられる。

その他不動産

X社の所有する不動産は9年前(2011年)に取得され、ラムドン省ダラット市の中心部に位置している。ダラット市はベトナムの中でも特に色濃くパリ風の街並みが残っており、近年多くの大手不動産会社が注視している。過去5年間でこの地域の不動産価格は平均100〜200%上昇し、一部の場所では400%上昇した。X社はベトナムの他の地域にも拠点を構えており、ダラット市の中心部に位置するホテルも所有している。X社の不動産の簿価の総額は、約700億ドンと記録されているが、売価はさらに高額である可能性もある。

X社のSWOT分析

SWOT分析とは、企業を分析する際によく用いられるフレームワークである。企業の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)という4つの要素を網羅し、企業を評価する。強みと弱みは内部要因、機会と脅威は外部要因として考える。

強み

X社は、世界保健機関が定める適正製造基準(GMP-WHO)を満たし、健康食品のHACCP資格を取得した2つの工場を所有している。最新の生産ラインを備えたX社は、高品質な医薬品・健康食品を大量生産する能力を持つ。

X社はラムドン省及び中部高原地帯全体に幅広い流通システムを有している。ラムドン省内の本社および拠点は4か所、省外の拠点は2か所、また全国の3,900の薬局・ドラッグストアがX社の製品を取り扱っている。また、X社は、ラムドン省と中部高原地帯のほとんどの公立病院や医療施設と親密な取引関係がある。

弱み

X社は事業戦略を再構築しており、現状やや不安定な状態になっていることは否めない。また、短期債務は債務構造の91.6%を占めており、キャッシュフローへの圧力が高い。しかしながら、X社の負債はここ1~2年で大幅に減少している。総資産に対する負債比率は、2019年の67.11%に対して2020年には46.50%まで下げられた。この結果は、X社が健全性を確保するために、負債の返済を積極的に実施しているからだった。

機会

BMI Researchによると、ベトナム国民の所得増加と健康意識の向上の2点から、ベトナムの製薬産業の成長はTOP 20に入ると発表した。また、ベトナム医薬品局は、2021年までにベトナムの医薬品市場規模が77億米ドルに達すると予測している。

製薬産業の発展に関する国家戦略として、ベトナム政府は国内で生産する医薬品、特に薬草から生産する医薬品の開発を優遇する方向性を示している。これは、Ⅹ社がアーティチョークなどの薬草から製造される健康食品の販売を促進する機会である。

また、Long Chau(FPTグループ)、An Khang(MWGグループ)など、国内大手ドラッグストアチェーンの拡大は、X社にとっても販路を拡大する機会である。特に北部や西南部などの市場開拓が期待されている。

脅威

ベトナムの製薬市場は、EVFTA(EUベトナム自由貿易協定)の締結により、外資系企業の参入がより激しくなると予想されている。また、コロナ禍は製薬業界の企業の財政状態を弱体化させたため、製薬会社の合併や買収がより多く発生する可能性があり、業界構造が大きく変動するリスクがある。

もちろん、コロナ禍そのものも大きな脅威である。現時点で、既にコロナ禍によってX社の売上は減少しているが、ベトナムのコロナ禍の先行きは依然不透明だ。事業モデルの転換をしているX社にとって、社会の不安定さは他の企業以上に脅威である。この脅威をX社が乗り越えるためには、潜在的な市場・顧客を見据え、そこを開拓する施策を策定する必要がある。

【ベトナム医薬品M&A案件】健康食品に強みがある元国営製薬企業:SWOT分析

日本の投資家(製薬会社)にとって魅力的なポイント

比較的予算を抑えられる

取引規模は中程度で、X社の実質的な支配権を獲得できる。 X社に出資する場合、日本企業は、支配株主であるNguyen Kim(あくまでも投資会社なので、製薬分野での専門知識はない)のすべての株式(全体の80%)の譲渡を受ける。端的に言うと、これは日本の製薬会社がベトナムに子会社を設け、運営する機会である。また、現在のX社の価値は過去5年間で最低レベルであるため、出資するには良好な時期と考えられる。9月25日のX社の株価を計算し、80%の株式を取得すると想定した場合、約1,450億ドン(7億円)の取引規模と想定される。

【ベトナム医薬品M&A案件】健康食品に強みがある元国営製薬企業:株価推移

現地ステークホルダーとのネットワークをすぐに利用できる

全国の拠点、ドラッグストアなどとのネットワークをすぐに活用できる。 X社は、ラムドン省立病院および中部高原地域の多くの病院と取引関係がある。また、X社はラムドン省内の本社と拠点は4カ所、省外の拠点は2か所、また全国の3,900の薬局・ドラッグストアがX社の製品を取り扱っている。加えて、X社は数百ヘクタールの原材料の栽培地を確保できるため、X社に出資する投資家はただ製造企業を所有するだけでなく、原材料から製造後までといったサプライチェーンの大部分を管理できる。

【ベトナム医薬品M&A案件】健康食品に強みがある元国営製薬企業:図表

アフターコロナを見据えた販売チャネル

X社の実施する健康食品と組み合わせた観光サービスのモデルは、ベトナムの観光地、特にダラット市で発展している。 日本と同じように、ベトナム人は旅行後に贈り物としておみやげを買うことがよくある。観光産業が盛んなラムドン省(ダラット市)において、果物やアーティチョークのお茶は観光客にとても人気があるため、アーティチョーク茶に注力しているX社にとっては大きな利点である。現在、X社は、ダラット市に2つの独立販売店を展開しており、省内の観光施設とネットワークを構築し、このモデルを促進する意向を固めている。

【ベトナム医薬品M&A案件】健康食品に強みがある元国営製薬企業:ベトナムお土産販売店
(画像)ダラット市にあるX社のお土産販売店 (出所)tuoitre.vn https://tuoitre.vn/

日本企業との繋がり

製造コストを節約するため、ベトナムで医薬品や健康食品のOEMを行い、日本に再輸出したい日本企業には、X社は非常に適している。 DHG Pharmaに投資する大正製薬、Mekopharに投資するニプロ、Ha Tay Pharmaceuticalの25%の株式を取得したあすか製薬など、ベトナム製薬会社に出資した日本企業の事例は数多く存在する。これらの出資は、日本企業にとって市場開拓や事業運営の効率改善、ブランド認知など多くのメリットをもたらした。

【ベトナム医薬品M&A案件】健康食品に強みがある元国営製薬企業:ベトナムM&A

まとめ

ベトナムの医薬品・健康食品市場は大きなポテンシャルを秘めており、今後ベトナムの消費市場の中でも特に大きく成長する可能性がある。ベトナムにおける健康意識の向上は一過性のブームではなく、ベトナム経済・社会の変化によるものなので、将来的にも安定した需要が期待できる。ベトナムの製薬会社については、以下の記事で詳細に解説しているので、是非参照いただきたい。

X社は国営企業として創業した歴史ある企業だが、昨今はやや不安定な状況に陥っている。事業モデルの転換とコロナ禍が原因である。そしてX社は外部からの出資を希望している。
X社は医薬品・健康食品の製造販売に注力している企業である。強みとしてはベトナム中部高原地帯を中心に広いネットワークがあることと、原料の栽培から製造後までのサプライチェーンの大部分を管理できることである。加えてX社には日本企業との繋がりが既にあるなど、多くの魅力を持っている。ベトナムに進出したい、OEM生産をしたいなどの希望がある日本企業から見れば、X社は良きパートナーとなり得る存在である。

本レポートを読んで、X社への出資あるいはベトナム進出をしっかり検討したいという方は、是非問い合わせボタンから問い合わせていただくか、以下のメールアドレスまで連絡いただけると幸甚である。

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