ベトナムで電子商取引(eコマース=EC)市場が目覚ましい成長を遂げている。ベトナム電子商取引協会(VECOM)の発表によると、2016年から2019年までベトナムのEC市場規模は平均30%で成長を続けており、2020年も引き続き30%以上の成長率となり市場規模は150億USDまで達するだろうと予測されている。特に2020年の新型コロナの拡大により、これまでECを積極的に利用していた若者だけでなく、中年や高齢者層もECを利用するようになったと言われており、2020年および2021年はこれまで以上にEC市場規模が拡大すると考えられる。
これからベトナムへ進出する企業、特に小売・飲食などのBtoC業界の企業にとっては、EC市場をいかに攻略するかがベトナム進出の成功の可否を分けると言っても過言ではないだろう。事実、弊社のお客様でもオンラインにおけるマーケティングや販売力を強化したいというご相談が多くなっている。今回のレポートでは、ベトナムのEC市場の現状を踏まえて、どのようにEC市場を攻略していくのかについて解説していきたい。
オンライン化していくマーケティング
これまでマーケティングと言えば、新聞広告やテレビでのCMが一般的であった。またインターネットの普及によって電子新聞の広告やメルマガなどの新しい広告の形が生まれてきた。技術の進歩によってさまざまな形の広告が生まれてきたが、ベトナムではどのような広告が注目を集めているのかについて見ていきたい。
上記はベトナムにおいて、企業がどのような広告を用いてマーケティングを行っているのかについて割合を示した図である。この中で最も多い形式はSNSである。ベトナム人は特にSNS利用者が多いと言われており、若者だけでなく中年層もFacebook、Instagram、YouTubeなどのコンテンツを楽しんでいる姿を街のあちこちで見かける。企業のマーケティング戦略もそれに沿った形となっており、多くの企業がSNS広告に注力していることが分かる。逆に2020年のデータで最も数値が低いのはテレビである。これは日本と同じように、動画投稿サイトなどの普及で「テレビ離れ」が進んでいる事情が関係していると考えられる。
ベトナムにおける広告の様相
ベトナムの広告の打ち方も、日本の広告とは異なる。日本の場合は製品やサービス名をあまり前面に押し出さない、ストーリー性のある広告が好まれる傾向があるが、ベトナムの場合は消費者の頭に残るように、製品名・サービス名が繰り返し登場するような広告が多い。このように、マーケティングの方法・形式に限らず広告の内容についても、ベトナムの国民性や傾向を考慮しながら実施していく必要がある。
SNSによるオンライン販売の増加
日本ではオンラインで買い物をする場合はAmazonや楽天などの通販サイトで購入する場合がほとんどである。しかしベトナムの場合は少々事情が異なる。ベトナムにもShopee、LazadaやTikiといった有名な通販サイトがあるが、それ以外にもSNSにおいて直接商品を購入するケースが非常に多い。SNSでの商品販売は個人によるものが多いが、最近では企業がFacebook等のSNSで商品を販売するケースが増えている。
上記はFacebookで男性・カップル向けのTシャツを販売しているオンラインショップのページである。このページでは写真の投稿によって商品のイメージ写真を閲覧できる他、メッセージ機能で販売者に対して質問や購入の相談などを伝えることができる。Facebookで販売されているのはこうした衣料品の他、時計や宝石などのアクセサリー、化粧品、サプリメントなどの健康食品、食料品などが多い。
日本企業が取るべきベトナムEC市場攻略の戦略
こうした状況を踏まえて、日本企業がベトナムのEC市場で成果を上げるにはどのような戦略を立てるべきであろうか。
まずいきなり本格的なEC販売を開始するよりも、小規模なテスト販売を通じてベトナム市場の反応を見ることが必要だろう。そのためには、比較的低コストから始めることができて、幅広い消費者へのアクセスが可能なSNSで販売を開始してみることが良い方法だと考える。この場合は配送方法や期間なども販売者側で自由に設定することができるため、ベトナム側で大量の在庫を揃える必要もない。ただし、テスト販売のためにはある程度マーケティングにはコストをかける必要がある。前述したように、マーケティングの事情が日本とベトナムでは大きく異なっているため、専門家のサポートやベトナム人のマーケティング担当者を利用して、効果的な広告を打つことが必要になる。
もしテスト販売が上手くいくのであれば、徐々に通販サイトなどでの大規模な販売へと広げていくことが可能になる。また企業によってはベトナム向けの自社のオンライン販売サイトを開設して販売をする例も多い。
ベトナムのEC市場が拡大していることは、外資系企業にとって非常に良い条件である。伝統的な対面販売を外資系企業が行うためには現地に人を派遣して、店舗の確保やディストリビュータとの連携を組む必要もあるため初期コストが高くなる。また各流通の段階でマージンなども発生してしまう。ECであればそうした初期コストをかなり低く抑えて販売を開始することが可能だ。今後もますます同市場の発展の方向性に注目が集まっていくだろう。
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