はじめに
ベトナムは経済成長を続けており、それに伴い、EC(電子商取引)の市場規模も拡大している。現在、ベトナムは東南アジアで最大のEC販売市場の一つとなっている。ベトナムの消費者にとって、日本製品は品質が良く安全など、様々な理由で人気が高まっている。そのため、ベトナムにおける日本製品のEC販売のポテンシャルは非常に高くなっている。
本レポートでは、ベトナムでEC販売に注力すべき理由、EC販売のメリットを分析し、ベトナムにおける日本製品のEC販売のポテンシャルを考察していく。
ベトナムEC市場の成長
ベトナムは近年、東南アジアで最も大きなEC市場の一つとなっている。2021年のベトナムのEC市場規模は130億米ドルに達した。2019年からは、年平均で61%ずつ成長している。2025年に、ベトナムのEC市場規模は390億米ドルに達すると予想されている(Googleの”e-Conomy SEA”による)。
2020年のベトナムにおけるEC支出は、「旅行・交通・宿泊」が最も多く、「電子・メディア」、「ファッション・美容」、「家具・家電製品」、「食品・パーソナルケア」、「おもちゃ・DIY・ホビー」が続いた。「ビデオゲーム」、「デジタルミュージック」は他の品目よりガクッと消費額が落ちるが、どちらも若年層を中心に今後人気を高める可能性が高いと考えられる。
ベトナムのEC売上をプラットフォーム別に解説する。ecommerceDBによると、2021年のベトナムでは、最も売上のシェアが高いECプラットフォームはThe gioi di dong、次いでFPT shop、Shopee、Dien may xanh、Cellphonesとなった。
売上高では3位にとどまったが、月間PV数ではShopeeがトップで、次いでThe gioi di dong、Dien may Xanh、Lazada、Tikiとなった。
ベトナムでのEC販売が注目される理由
ベトナムの人口は、毎年増加しながら1億人規模に達している。一方で、この人口ボーナス以外にも、様々な要因でベトナムのECは有望視されている。
本章では、ベトナムでのEC販売が注目されている理由を1つずつ挙げて解説する。
1億人規模の大きな市場
ベトナムの人口は増加し続けている。ベトナムの人口は2021年に9820万人に達し、2050年には1億960万人に増加すると予測されている。
ベトナムでは生産年齢人口(15~64歳)の割合が非常に高く、2025年には総人口の約68%を占めると予想されている。
若年層は、新しいデバイスやサービスに適応する能力が高く、EC市場の潜在的な主要顧客である。ベトナムでは、15歳から34歳の若年層が2025年には2,800万人(総人口の28%を占める)に達すると予想される。このように若年層が多いベトナムでは、EC展開のポテンシャルが高いと考えられる。
スマートフォンの普及率が高く、基礎的なインフラが整っている
2021年のベトナムにおけるスマートフォンの普及率は68.2%であり、ベトナムは世界で7番目にスマートフォン普及率の高い国である。この普及率は日本(65.9%)よりも高い。
ベトナムのインターネット普及率は増加傾向にあり、2016年の45%から2021年には74%(CAGR期間2016年~2021年は約10.5%)、2025年には81%に達すると予想される。
EC市場を発展させる上で、スマートフォンとインターネットは重要なインフラとなる。ベトナムはスマートフォンやインターネットの普及率が高い水準にあるため、ECの発展が期待される。
日本製品に対する信頼度が高い
日本製品は、製品の品質の良さ、安全性など多くの理由から、ベトナムで根強い人気がある。ベトナムの日本製消費財の輸入額は、2015年には20億米ドルだったが、2019年には30億米ドルにまで成長した。しかし、Covid19の影響により、日本の消費財の輸入額は、2020年に28億米ドルに減少した。
ベトナムの消費財の輸入は、日本や中国などアジア近隣国からが多い。
所得増加をとともに、ベトナム人の生活水準も徐々に向上している。そのため、食品、健康食品、美容品、ベビーケア、生活用品などは価格だけでなく安全性もより重視されるようになり、日本製品の人気に繋がっている。
ベトナムのECサイトでは、日本製品の人気が高く、良く販売されている。ベトナムで日本製品を扱っているのは、ベトナムの大手ECサイト(Shopee、Lazada、Tiki、Sendoなど)、国内の会社(Sakuko、Japanshop、Konni 39、Japana)、もちろん日系の会社(Orihiro、Uniqlo、DHC、Shiseidoなど)である。
ベトナムでのEC販売のメリット
本章では、ベトナムでのEC販売のメリットを紹介、解説する。
ターゲットを絞ったマーケティングができる
ECのメリットの一つとしては、デジタルマーケティングを通じて多くの顧客にリーチできることである。デジタルマーケティングは、企業が自社製品の持つ潜在的な市場を正しく認識し、選択することに役立つ。そこから、企業がターゲットとしたいセグメントの顧客を引きつけるための広告プランを考え出す。例えば日本製品の場合、過去に日本留学や日本での就業経験がある人を狙ってマーケティングする方法が出来るので、日本製品を購入する可能性が高い人たちに効果的にリーチできる。加えて、ベトナムでは電子決済の普及等に伴い、収集できる情報の量や種類が増加している。
コストを抑えられる
ECを行う上で、大きなメリットとなるのが価格である。基本的には店舗の家賃や人件費等の、店舗の運営に関連する費用を削減できるため、販売価格は安くなる。現在、ハノイやホーチミンなどの大都市では不動産形態を問わず、日本と変わらない水準の家賃がかかる物件が増加してきている。そのため、ベトナムにおいても固定費の削減は事業にとって大きなポイントとなる。また、直接消費者に販売できるため、中間業者に支払うマージンなど物流のコストも削減できる。
2020年にベトナム商工省が1078人を対象に行った調査によると、ECを利用する理由として、41%が「割引キャンペーンがあるから」、39%が「店頭で買うより価格が安いから」と回答した。
ベトナム消費者のライフスタイルに合っている
ベトナムの経済・社会の近代化に伴い、日常生活の忙しさはますます高まっている。 したがって、時間の節約は日々増加している。オンラインショッピングは、直接お店に出かける必要がないので、時間の節約になり、便利になる。また、ネットショッピングなら、いつでも気軽に購入することができる。さらに、宅配便を利用すれば、郊外に住んでいる人でも簡単に買い物ができる。
2020年に商工省が1078人を対象に行った調査によると、4割の人が配送サービスの提供を決め手にオンラインショッピングを選んだ。
ベトナム消費者のライフスタイルに合った販売方法を利用することで、先進的な企業であるというブランドを構築できるというメリットもあります。
商圏を広げることができる
ECは、地域に比較的囚われず商圏を広げるのに役立つ。直接店舗に行かなければならない従来の販売経路とは異なり、ECでは自宅に居ながら商品が購入出来る。現状、ベトナムの中間層はホーチミン市やハノイ市に集中しているが、ダナンやハイフォン、カントーなどの地方都市でもEC利用者が増加している。ECは、ベトナムの中間層へリーチ出来るというメリットがある。
まとめ
ベトナムでは、人口増・ITの普及によってECの需要が高まり、購買力向上に伴う品質重視の志向で日本製品の人気が高まりつつある。
ベトナムでECを行うメリットとしては、ターゲットを絞ったマーケティングが出来ること、コストを削減できること、現代のベトナム人のライフスタイルに合っていること、商圏を拡大出来ることが挙げられた。
ベトナムでECサイトを通じた日本製品の販売は特にポテンシャルが高い。コストを抑えたスモールスタートも可能なので、海外進出の第一歩としては最適である。
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