はじめに
ベトナムの日用品(日用消費財)市場が拡大している。ベトナムの人口は毎年安定して増加しており、2020年時点で9734万人と、1億人に肉薄している。2040年代には、日本の人口を超えるという試算もある。加えて、ベトナムでは人口増だけでなく経済発展による所得の増加も発生しており、人口に占める富裕層および中流層の割合が増加している。このような状態にあるベトナムにおいて、生活必需品の市場が拡大するのは、もはや必然と言える。
本レポートでは、ベトナムの日用品(生活用品)について網羅的に紹介する。市場構造、主なプレーヤー、そして消費者の特徴や今後の動向、コロナ禍による影響まで見ていく。
「日用品」の定義
ベトナムには、日本で浸透しているような「日用品」という一般的な概念が存在しない。加えて、法律上でも日用品の分類を特に定めていない。
今回のレポートでは特に生活用品の中で、歯磨き粉、殺虫剤、粉末洗剤、柔軟剤、食器用洗剤、ティッシュペーパー、おむつ、シャンプー、トイレ用洗剤、うがい液を扱う。
市場規模
市場調査会社であるKantar社によると、ベトナム日用品の市場規模は、2020年に31億米ドルに達している。
また、同社によると2020年は新型コロナウイルスの影響で、消費者にはより慎重に支出する傾向が見られたが、日用品の買い物需要はプラス29%増加した。これはベトナムの日用品市場のポテンシャルを表す重要な現象である
ベトナムの日用品市場は、潤沢な資金と、ブランディングおよびマーケティングのノウハウを持っている多国籍企業よって支配されている。これらの企業は、ベトナム政府が市場を国際的に開放した90年代からベトナム市場に参入している。そのため、ベトナム消費者の心理や行動を十分に理解するだけでなく、ベトナムの経済・政治・環境の変動に迅速に対応できるという強みもある。
有望な商品
本章では、ベトナムにおいて特に需要が増加している商品について紹介する。
歯磨き粉
Cuu Long 大学の研究(2018年)によると、ベトナム歯磨き粉市場には、外資系日用品の最大手である「Unilever」(英国)が60%、「Colgate-Palmolive」(米国)が30%、残りの10%はベトナム国内外の中小企業である。Unileverはベトナムの歯磨き粉市場で飛びぬけて大きなシェアを持っている。
ちなみに、ベトナム政府が外資系企業に対して国内市場を開放した直後である1995年には、国営企業の「P/S社」と、南部にある「Da Lan社」の市場シェアの合計は9割以上を保有した。しかし、「P/S社」がUnilever、「Da Lan社」はColgate-Palmolivenによってそれぞれ買収された。UnileverとP/S社のM&A取引金額は500万USD(1995年の時点)であり、当時のベトナムで最大のM&A取引の一つであった。
しかし、近年はベトナム日用品市場のシェア獲得を目指す新規参入企業も出現している。これらの企業は純粋な日用品メーカーではなく、元々違う分野の大手企業である。新規参入企業がテレビ広告へ多く投資をするなど大きなアクションを起こしており、既存の大手企業が独占体制を維持することを脅かしている。
Q&Me(2019年)の調査によると、ベトナム人は1日に数回歯を磨いている。ベトナム人の大多数が1日に2〜3回歯を磨く。上記のグラフのタイミング以外には顧客との会合の前、会議や重要なイベントの前など、仕事に合わせて歯を磨く習慣を持つベトナム人も多くいる。
殺虫剤
ベトナムは熱帯気候の国であるため、特に田舎や水辺付近で蚊や昆虫が多く生息しているため、多くのベトナム人にとって殺虫剤は生活に不可欠な製品である。
ベトナムの殺虫剤市場において、黎明期である90年代から早期に市場参入していた外国ブランドは消費者に認知され、市場を支配している状況である。
ベトナム人が最も親しんでいるブランドは米国の「SC Johnson & Son」の「RAID」ブランドであり、このブランドはベトナムに90年代に参入し、テレビ広告に力を入れていた。ベトナムで30年ほど製品を販売しており、ベトナム消費者の中には包装を覚え、あまり販売会社のことを知らなくても習慣的に購入する人も多い。
「RAID」の次点は、日本の「フマキラー社」の「JUMPO」ブランドである。数十年間で、製品の見た目と香りを維持してきた「RAID」と異なり、「JUMPO」は頻繁に新しい香りの殺虫剤を販売している。ラベンダーやレモンの香りがする製品はJUMPOの中で最も売れている製品だとみられてる。
粉末洗剤
ベトナムの洗濯用洗剤市場の大部分を占めるのは、「OMO」、「ARIEL」などの外資系大手が展開するブランドである。
ベトナム財務・マーケティング大学(2019年)の統計によると、洗剤業界の市場シェアをリードしているのは英国のUnilever(54.9%)、米国のProcter&Gamble(16.0%)で、
ベトナム国内のブランドはDai Viet Huong(11.6%)が最大手である。それ以外ではLIX(2.7%)、Vico(2.4%)、NETCO(1.5%)などが小さなシェアを保有している。また、国内の洗剤ブランドの製品は主に地方、田舎で購入され、外資系企業の製品は都市部をほぼ完全に支配している。
外国企業がベトナム国内企業を圧倒している要因は「資金力」だと思われる。これらの企業は、新製品や製品ラインを頻繁に新開発しつつ、顧客調査や広告に強力に投資しているため、大きな競争力を持つ。それに対してベトナム国内企業は資金力が無く(逆に赤字経営、多額の負債を負っている場合も少なくない)、新製品の開発や広告への投資が出来ず、消費者からの認知度が非常に低い。
ベトナム現地新聞によると、2020年の洗濯用洗剤産業規模は年間5〜6%増加している。4つの大都市圏(ホーチミン、ハノイ、ダナン、カントー)で粉末洗剤の市場シェアをリードする上位は、「OMO」(Unilever社)、「ARIEL」(Procter&Gamble)、「LIX」(LIX社、国営ベトナム化学公社の子会社)である。一方、農村地域には、「OMO」、「ALBA」(ベトナムのDai Viet Huong社)などが人気のあるブランドである。
外資系大手企業はベトナム洗剤市場で圧倒的なシェアを持っているが、2021年にそれを脅かす出来事があった。それは、ベトナム最大手コングロマリットであるMASAN(マサン)の市場参入だ。
MASAN GROUPの日用品生産子会社であるMasan Consumerを開発した「Joins粉末洗剤」は最近消費者から大きな注目を集めている。
実際、マサンは製品の研究開発(R&D)に強みを持ち、現代の消費者のニーズを十分に理解している優秀な企業である。さらに、MASANは全国に3,000店舗を展開するVinMartというコンビニエンスストアチェーンを保有しており、Joins製品をスムーズに消費者に届けることができると思われる。また、国内の洗剤メーカーとは異なり、Masanは十分な「資金力」がありながら、数十年間食品を販売した経験を持つ企業であるため、新製品のブランド広告、販売促進施策などを高いレベルで実施する可能性がある。
マサンの参入は、ベトナム洗濯洗剤市場の構造が大きく変化する要因だと考えられる。
柔軟剤
洗濯用洗剤以外に、柔軟剤を利用するベトナム人も多い。洗濯用洗剤と同じく、この市場においても、Unilerver社の「Confort」ブランドとProcter&Gamble社の「Downy」ブランドが市場を独占している。
柔軟剤の製品の市場を脅かすのは、柔軟剤と洗濯用洗剤両方の機能をもつ最近の洗濯用洗剤である。このような製品を開発しているのは「VISO社」(ベトナム)、「TIDE社」(アメリカ)などがある。ただし、これらの製品は香りとその持続時間が柔軟剤単品より劣ってしまう場合が多いため、ベトナム人は洗濯用洗剤と柔軟剤とをそれぞれ別に購入する習慣がある。
Konvoi.comの調査によると、ベトナム人は一か月に1回、1~1.8リットルの柔軟剤の製品を購入していることが多く、消費者が柔軟剤を購入する際の決め手は「ブランド」ではなく、「香り」と「香りの持続時間」だと判明した。
食器用洗剤
これまで紹介された日用品と同じく、食器用洗剤の市場を支配している企業は「Unilever」である。Vinaresearchが実施した820のベトナム人が参加した調査の結果によると、参加者の7割はUnileverの「Sunlight」ブランドの食器洗剤を使用している。また、95%の参加者がSunlight製品を使用したとこがあるという。実際、都市にある大きなスーパーマーケットの棚は、多くの部分がSunlightで埋められているという光景も珍しくない。他社のVinh Hao、Lix、Surfという製品は、パパママショップでよく見られる。
Sunlightにとって最大の競合は、20年前に「食器洗剤の王様」と呼ばれた「My Hao社」である。My Haoは1990年代に、ベトナムの食器洗剤市場シェアの8割を保有していたと推測されている。しかし、Unilleverが参入した後、食器洗剤の国内メーカーがだんだんと市場から撤退し、Vinh Hao社のように生き残ることが出来た企業は非常に少ない。
現在、My Haoの市場シェアは約30%あると現地新聞により推測されている。同社の主力販売チャネルは個人消費者ではなく、飲食店やホテルなどをターゲットにした卸販売だ。My Hao社自体が、「昔の栄光を再現する」ということを公表しており、Unileverと競争すべく、新製品の開発や広告の実施に力を入れている。
ティッシュペーパー
ベトナムのティッシュペーパー市場は日本企業にとって非常にポテンシャルが高く、日本企業の参入成功事例が複数ある。
ベトナム人のティッシュペーパー消費量は年間で44%増加しているが、それに対して国内生産量の増加率は28%にとどまっている。また、2020年に国内に生産された284千トンのティッシュペーパーのうち、約2割以上は輸出されていている。したがって、ベトナム国内のティッシュペーパー消費量は国内生産量を上回っている。2020年に、ベトナムは約46千トンのティッシュペーパーを輸入しており、輸入先は主にインドネシア、中国、マレーシアなどである。
現在、ベトナムでティッシュペーパーを生産・販売している主要なプレーヤーは「NEW TOYO PULPPY」(台湾)、「Sai Gon Paper」(日本)、「ユニ・チャームベトナム」(日本)である。ティッシュペーパー市場も、外資系企業によって支配されている。
台湾のNEW TOYO PULPPYはベトナムで工場を建設し、ティッシュペーパーを製造販売してきた一方で、日本からは双日とユニ・チャームが「M&A」という形でベトナムティッシュペーパー市場に参入した。「Sai Gon Paper」は元々、ベトナムの最大手製紙企業の一つであった。2018年、日本の大手総合商社双日は、9100万USDの経営赤字に陥っていたSai Gon Paperへ出資し、同社の発行済み株式の95%を取得した。Sai Gon Paper はベトナム人にとって親しみのあるブランドであり、生産能力でもベトナム国内トップの企業である。今後、双日主導のもと、同社の経営状況が改善されることを期待するベトナム人は多い。
また、2011年にユニ・チャームは、当時ベトナムで最大の市場シェアを誇る紙おむつの製造会社であるDiana(ダイアナ)の株式の95%を取得した。取引額は1億8,400万ドルであった。ユニ・チャームがダイアナを買収した後、改名された「ユニ・チャーム・ダイアナ」の売り上げは買収前の3倍になった。
加えて、その時のダイアナ再編を主導したDo Minh Phu氏は現在、ベトナムのジュエリー市場で2番目に大手である「DOJI グループ」、大手銀行Tien Phong 銀行、Tien Phong証券会社の会長である。2019年、日本のSBIホールディングスはTien Phong銀行へ出資し、同銀行の発行済み株式数の約1割を保有した。
おむつ
ベトナムのおむつ市場は、米国のKimberly Clarkの「Huggies」ブランド、米国のProcter & Gambleの「Pamper」、日本のユニ・チャームとベトナム法人企業の合弁である、先述したDiana・UnicharmのBobbyブランド、日本の花王の「Merries」など外資系大手が大部分を占めている。
ベトナム製紙協会によると、ベトナムで生産されているティッシュペーパーとおむつの45%は外資系企業によるものであり、残りの55%はベトナム企業によるのものだが、以前はベトナム企業が100%を占めていた。また、同協会の予想によると、現在から約10年後には、外資系企業が生産するティッシュペーパー・おむつがベトナム国内の生産量の60%以上を占めるという。
ベトナムでおむつの生産は難しくないが、市場を支配するために大規模な投資を行う必要があり、販売能力も非常に重要だ。ベトナムのおむつメーカーに共通することの一つは、海外でも国内でも、製品を生産するために原材料を輸入しなければならないということである。おむつ生産の主要原料である「フラッフ」と「フラッフパルプ」はベトナム国内で製造されていない。これらの原材料を製造できる工場を作るためには莫大な投資をしなければならないため、ベトナムでおむつを製造する会社は実質的に原材料を輸入するしかない。
ベトナムのおむつ市場は主に子供向けだが、今後は人口の高齢化が進み、高齢者向けおむつの市場は非常にポテンシャルがあると考えられる。加えて、ベトナム人は家族、特に親を非常に大切にする文化があるため、日本企業の製造する高品質な大人向けおむつは、特に有望である。
出所:vnexpress.net
シャンプー
ベトナム現地の商工新聞(2016)によると、ベトナムのシャンプー市場は2025年まで年間約6%の安定した成長率を維持し続けると予測されていた。
現在、ベトナムのシャンプー市場は主に「Unilever」と「Procter&Gamble」の2つの外資系大手によって支配されている。Unileverは「Sunsilk」、「Clear」、「Dove」、「Lifebuoy」などの有名ブランド群でベトナムのシャンプー市場を支配しており、この分野の他社がUnileverの製品とほとんど競合できないほど、圧倒的な立場である。Unileverの次点であるProcter&Gambleは、「Pantence」、「Head&Shoulders」というブランドを持ち、女性向けシャンプーを主力としている。2つの大手以外には、「Double Rich」、「Enchanteur」、「Palmolive」といった、他の外資系企業のブランドも市場に参加している。
ベトナム国内企業は、この市場でほぼ敗北していると言える。ベトナムの「Thai Duong」ブランドは、多くの人々に知られて、トップクラスのブランド達に割って入ろうとしている唯一の国内製品である。しかし、Thai Duongブランドを所有する「Thai Duong社」の経営状況は長年にわたって大幅赤字を記録している。外資系大手との競争には多大な資金力が必要であり、資金力があまりないベトナム国内企業は依然として困難に直面している。
トイレ用洗剤
Unileverは、トイレ用洗剤市場をもリードしている。同社の「VIM」ブランドは手ごろな価格だけではなく、品質や安全性を保証するため、ホーチミン市Pasteur疫学研究所製品の検定を行っている。UnileverのVIMの次点として、フランスのAMG社の「GIFT」というブランドがある。GIFT製品の特徴は漂白剤の臭いが無いことで、農村部で人気がある。
3番目は、タイ企業が手掛ける「DUCK」ブランドだ。「DUCK」は他の製品の25倍の効果がある濃縮化学洗剤濃度が含まれている。DUCKは、ベトナムで独自の市場セグメントで製品を販売している。
うがい液
ベトナム人にとって毎日歯磨くのは当たり前だが、忙しい時は歯磨きの代わりに、うがい液を使用することもある。
うがい液のセグメントでは、日本でも知られるアメリカ大手「Johnson & Johnson社」の「LISTERINE」ブランドが完全に市場を支配しているとみられている。LISTERINEの製品は手ごろな価格で、スーパー、ドラッグストア、パパママショップといった多くのチャネルを通じて、一般的な日用品のように販売されている。その一方で、LISTERINEの次点にとして挙げられるスペインの「DENTAID社」が展開する「Perio Aid Intensive Care」製品は日用品のように販売されるのではなく、歯医者や病院で推奨されており、価格の高い「医薬品」というイメージがある。
ベトナム消費者の所得水準・購買レベル
ベトナムの経済発展に伴い、ベトナム人の一人当たりGDPも過去10年間で急増している。 ベトナム総合統計局(投資計画省)のデータによると、ベトナム人の一人当たりGDPは2010年の1,297米ドルから、2020年までの期間で2倍以上に増加し2,725米ドルに達している。また、2024年までに3,931米ドルになると予測されている。
一人当たりGDPの増加に伴い、ベトナムでの小売売上高と消費量も急増し、有望な消費者市場だと評価されている。外国企業、特にものづくりに強みを持つ日本企業にとっては特に有望である。
ベトナム消費者の特徴
本章では日用品消費に関する、ベトナム人消費者の特徴をいくつか紹介する。
「低価格」は優先事項ではない
メーカーにとって重要なことは、他社製品と比較して製品の用途を差別化することである。差別化された用途を持つ製品は、その用途を求める消費者に対しロイヤリティを築け、長期的に製品をリピートするようになる。たとえば、Unileverの「Clear」シャンプーは「フケと頭皮の真菌に特化している」と宣伝されており、他のブランドとは異なる用途であることを強調されている。
実はベトナムの日用品の販売価格は高くなく、価格競争を実施する余地はあまりない。設定された価格を1割~2割ほど割引するなどのキャンペーンを実施しても、元値が安価なためお得感が出にくく、ベトナムの日用品生産・販売者は「おまけ」、「増量」などのキャンペーンを実施することが多い。
以上の2点から、ただ単に価格を下げようとすることは、ベトナムの日用品市場では有効な手段だと言えない
出所:Shopee.vn
ディシジョンメーカー(購買決定権)は「女性」
ベトナム財務・マーケティング大学の研究(2019年)によると、ベトナムにおける日用品の購入決定者の85%は「女性」だと判明した。
ベトナムの特に農村部では、家事は女性の役割という考え方が未だ主流であり、日用品の購入なども女性が中心である。
日用品販売企業はこの特徴を理解しているため、女性向けの広告を作成することが多い。広告のストーリーは概ね、近所や友達同士の主婦が製品について話し、またはいい製品を使用しながら、幸せな家庭を見せる構成が多い。
ベトナム人が認知するのは「ブランド名」であり会社名ではない
本レポートでこれまで度々登場した、ベトナム日用品市場を支配している「Unilever」や「Procter&Gamble」でも、多くの消費者には社名を認知されていない。また、「Unilever社」を知っていても、Unileverが販売している製品はすぐに思いつくベトナム人は多くない。反対に、それら大手の代表的な製品である「OMO粉末洗剤」、「P/S歯磨き粉」、「CLEARシャンプー」を知らないベトナム人は非常に珍しいと考えられる。
日本では「ライオン」や「花王」といった企業名で消費者が認識することが多く、ベトナムとは異なっている。ベトナム市場への参入を検討している日本企業は、この点を考慮する必要がある。
出所:thanhs.com.vn
コロナの影響
小売業を紹介するにあたって、新型コロナの影響は欠かせない要素である。本章では、ベトナムにおける新型コロナと日用品の関係を見ていく。
健康意識と大量購入
日用品は、コロナ禍の影響をあまり受けていない業界の1つである。しかし、消費者の心理と行動には変化が見られる。
消費者は外出を制限し、買い物に行く回数を経るため、一度に大量購入する傾向が見られる。また、健康意識の高まりが消費者の製品の見方を変え、製品の原材料や製品の用途を慎重に調べるベトナム人消費者が増加している。つまり、以前より購入決定に至るまでの検討時間と検討条件が増えている。
パパママショップから「eコマース」へ
もう1つの大きな変化として、EC(電子商取引:オンラインショッピング)で日用品を購入する消費者が増加していることが挙げられる。
これまで、消費者は主にパパママショップで日用品を購入することが多かった。その理由として、スーパーは町の至る所にあるパパママショップよりも遠いことが多い点、一度バイクを完全に離れて買い物をしなければならないという点の2点が挙げられる。一方、パパママショップは消費者の家の近くにあるだけでなく、バイクに乗ったまま店主に商品を持ってきてもらうことができるので、スーパーよりも楽に買い物が出来る。
しかし、現在はECで商品を購入すれば自宅に直接届けられ感染を抑制できるという大きな利点があるため、消費者の購買チャネルは「パパママショップ」から「EC」へと変化している。
この変化を捉えて、Unileverなどの日用品大手は早い段階で対応している。UnileverはLazada、ShopeeなどECプラットフォーム内の同社販売ページにアクセスを集めるため、デジタル広告を促進している。
出所:vinid.net
まとめ
ベトナムの日用品市場は、Unilever、Procter&Gambleなどの外資系企業によって支配されている。しかし、最近のMASANなどの国内大手の動きを見ると、ベトナム企業は市場参入し、これらの多国籍企業から市場シェアを獲得しようとしている傾向がある。つまり、ベトナム日用品市場はこれから激しい競争が始まると考えられる。
日本企業は、ベトナム日用品市場でティッシュペーパー、おむつなど紙に関するセグメントに参入し、活躍しているケースが複数ある。今後は、特に大人向けおむつ市場が日本企業にとって有望である。日本企業の参入の際には、ベトナム人消費者の特徴である「値引きに惹かれにくい」、「ディシジョンメーカーは女性」、「社名ではなくブランド名を認知する」という3点を考慮すべきである。
ベトナムの日用品市場は、他の業界に比べるとそこまでコロナ禍の影響は大きくなかった。しかし健康意識の向上、一度の買い物での大量購入、EC利用の増加といった、複数の大きな変化を起こした。
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