BPOとはBusiness Process Outsourcingの頭文字を取った言葉であり、ビジネスのある業務の一部を外部へアウトソーシングする行為全般を指す。BPOサービスとは、そうしたアウトソーシングを顧客から請け負い、実施するサービスのことである。
これまでは国内でのアウトソーシングが主であったが、グローバル化が進むとともに中国やフィリピンと言った国外にアウトソーシングを行う企業も増えてきた。BPO業務はシステム化や自動化が難しい、または小ロットの業務が多いことから、人手が多く必要な業務である。そのため、賃金が安い国へアウトソーシングすることで、全体的なコストを下げることができるというのが理由である。そうした中で、新たに「ベトナム」も魅力的なアウトソーシング先として注目されている。
今回は、そうしたBPO市場の概況を解説し、ベトナムへBPOを行うのに適した業務およびメリットとデメリットを解説していきたい。
日本におけるBPO市場の概況
矢野経済研究所が発表した「2020-2021 BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場の実態と展望」によると、2018年から2024年までの間でBPO全体の市場規模は4兆2,113億円から4兆7,479億円へと12.7%拡大すると予測されている。またIT系BPOだけでは14.4%の拡大、非IT系BPOだけでは10.3%の拡大となっている。IT系BPOとは文字通りIT関連のBPOであるが、システムの運用・保守を外部にアウトソーシングする業務などが主である。一方、非IT系BPOとは営業資料の作成、顧客情報のデータ入力、経理・総務業務など多岐に渡る。注目すべきは、これだけ企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が注目され社内システム・業務のIT化が進んでいる中でも、非IT系BPOの市場規模は継続して拡大していくと予想されていることだ。
BPO市場規模はなぜ拡大していくのか
システム化が進んでいく中で非IT系BPOが増加している背景には、大きく2つの理由が考えられる。
デジタル化
デジタル化が進むことによってBPOが増えるというのは一見矛盾しているようにも見えるが、実際にどのような業務がBPOとしてアウトソーシングされているかを見ることでその謎が解ける。
まず、現在ビジネスで使われるほとんどのデータは、紙への印字などではなくデータで管理されておる。しかしまだ手書きの書類やハガキなど、アナログな情報媒体が残っているのも事実だ。そうした中で、そうしたアナログのデータを、デジタルなデータへ移管するというプロセスが発生する。紙に記された文字を自動認識するOCR(光学文字認識:手書きや活字のテキストをデジタルな文字列に変換するソフトウェア)を導入する企業が増えているが、手書き文字の読み取りなどはまだ精度が高くない。そのため、どうしても人間による文字の読み取り作業が発生する。これを自社内のリソースで行おうとすると膨大な時間・労力のコストがかかる場合もあるため、専門業者にアウトソーシングしてしまう企業が多いのだ。
またECサイトの普及も、BPO業務を増加させる要因の1つである。商品の詳細情報や規格を多くのECサイトに登録する必要があるが、商品量も多くなおかつ個々のサイトにそれぞれ情報を入力する作業が必要であるため、こうした業務もアウトソーシングされることが多い。
人手不足
少子化等の影響で、各業界において人手不足が叫ばれて久しいが、一方でアウトソーシングされるような業務は、単純作業ではあるが人手と時間コストがかかるものがほとんどである。そうした背景で、自社では業務をすべてこなすことができずに外注するケースが多い。
一方でBPOを請け負う専門業者は一カ所のセンターなどに数百名の人材を集めて業務を行わせているケースが多い。ある企業がこうした請け負い業者に業務をアウトソーシングするということは、外部の人手を「レンタル」する形となる。その意味では、BPO業務は人材サービスの1つであるともいえる。
BPOで注目されるベトナム
近年はBPO業務のアウトソーシング先として中国、フィリピンといった国々に加えて「ベトナム」が選ばれることが増えている。理由としては、まずベトナムの賃金が安いということだ。
これまでアウトソーシング先として多く選ばれていたのは中国であったが、経済発展とともに中国の賃金が徐々に上がってきたため、次なるアウトソーシング先として、まだ賃金が安いベトナムが注目されている。例えばパソコンをある程度使用することができ、日本語も中級程度こなせる人材であれば、ベトナムでは600~700USDで採用することができる。一方で、中国で同レベルの人材を採用するには、より高い賃金が必要になるだろう。もし日本語を使う必要がない業務であれば、人件費はもっと下がる。
また、ベトナムは近年IT人材の教育にも力を入れているそのため、システムの運用・保守といったIT系BPOを担える人材も増えている。
一方で、ベトナム以外の国に発注する方が良いBPO業務もある。例えば英語を多く用いる必要がある業務は、フィリピンで実施する方が、効率が良いだろう。業務内容によってアウトソーシング先を臨機応変に選んでいくことが必要だろう。
まとめ
今後、大企業だけでなく中小企業のデジタルトランスフォーメーションが進んでいく中で、BPOがますます注目されるようになるだろう。外国でのBPOというと品質に懸念を感じる顧客も少なくないが、ダブルチェックやマネージャーによる厳しいチェック体制によって、そうしたリスクを回避することも可能だ。社内で業務の効率化に悩んでいる企業は、海外でのBPOを一度検討してみる価値があるだろう。