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ベトナムのビッグデータ分析と活用ビジネス│概況と今後の展望

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はじめに
この記事で伝えたいこと
  • ベトナムでは小売業や金融業など、様々な分野でビッグデータ活用が進んでいる。
  • ベトナムでのビッグデータ活用は大企業を中心に発展しており、中小への普及は今後の伸びしろである。
  • ビッグデータ活用の重要なインフラとなるデータセンターがベトナムでは急成長しているので、同様にビッグデータ活用も伸びる見込み。

はじめに:ベトナムにおけるビッグデータ活用の概況

ベトナムでは、小売業・金融業を中心にビッグデータ活用を推進する企業が増加している。ベトナムではデータ活用が進んでいなさそうなイメージがあるかもしれないが、実際には大きな変化が起き始めており、ビッグデータの捉え方は日本と大差がない。

例えば、ベトナムではコンビニやスーパーだけでなく伝統的な市場でも電子決済が利用可能になりつつある。これまでの市場の販売者は、脱税等を目的に現金手渡しで商売をしていたが、一部地域では電子決済が使えないことによる客離れが発生しているからである。

このように、今までは出来なかった伝統的な市場での情報収集が可能になる見込みなので、ベトナムの小売企業はデータ活用推進に注力している。

本レポートでは、ベトナムのビッグデータ・データ活用ビジネスの概要や政府方針、業界ごとの事例、企業の動き等を網羅的に紹介・解説していく。

ベトナム政府の方針

本章では、ビッグデータに関するベトナム政府の見解や政策を時系列で解説する。

議決124/NQ-CP: (2030年及び2045年に至る産業開発に関する担当省庁の決議)

2020年9月にベトナム政府は、「2030年及び2045年に至る産業開発政策に関する担当省庁の決定」に関する政府議決第124/NQ-CPを発表した。

この議決は、2030年及び2045年までの産業開発に不可欠な行動に関して、その行動を担当する省庁を決定する内容となっている。この議決においてビッグデータ事業に関連する内容としては、商工省が「企業や工業製品のデータベース構築、分析、評価などを実行することができ、企業が必要に応じて効率よくアクセスする負荷に耐えられるレベルの産業用大規模データセンターの設立」を担当すること、情報通信省に対しては、2025年までの「国家DX戦略」体制整備、その後2030年までの大規模データセンターの開発を担当することが明記されることとなった。

首相決定第749/QD-TTg:

首相は決定749/QD-TTgで、国家DXプログラムに関する課題と解決策を具体的に以下のように定めている。(ビッグデータに関する部分だけを抜粋・意訳)

デジタル政府の発展:ソーシャルメディアの最新技術を応用し、利便性の高い方法で情報と行政サービスを提供する。ビッグデータ分析、人工知能、VR、ARを推進して、国家機関の方向性と管理のすべての面で包括的なDXを実施し、最高級にユーザーフレンドリーなシステムを提供する。

デジタル社会の発展:人工知能(AI)、データサイエンス、ビッグデータ、クラウド・コンピューティング、IoT、VR、AR、ブロックチェーン、3Dプリントなどのデジタル技術に関連した大学院、大学、専門学校のトレーニングプログラムを調整及び拡充する。

これらの他にも、ベトナム政府は紙の身分証明書をICチップ付きのカードに変更することを決定し、わずか半年で人口の半分以上である約5千万人にこのカードを配布した。ベトナム政府はこのカードから情報を収集し、国民の生活・健康・医療管理に活用する見通しである。

このように、ベトナムでは政府も積極的にビッグデータの収集・活用等のDXを推進している。

ベトナムにおけるビッグデータの活用動向

ベトナムでのビッグデータ活用は、一般的には2015年頃から普及し始めたとされている。歴史が短い一方で、ベトナムでは既に幅広い分野でのビッグデータ活用事例が見られる。

本章では、ベトナムにおけるビッグデータの活用事例を分野ごとに紹介していく。

小売

ベトナムに限った話ではないが、小売業においては在庫管理にビッグデータが活用されているケースが多い。ビッグデータによって売れ筋を予測することで商品在庫の調整精度を高め、過不足なく効率的な供給を目指す。生産・物流・販売といったサプライチェーンの各段階で正確に情報を同期・一覧することが可能になっている。

ビッグデータは在庫管理だけでなく、柔軟なカスタマーサービスの形成に寄与し、顧客体験の向上を促すことが出来る。例えば、EC等におけるチャットボットシステムは、会話から顧客データを収集・分析し、消費者のニーズを正確に捉えることが可能である。

ベトナムでは、既にこのような体制を整えている企業が見られる。

ベトナムの小売業ではビッグデータの活用が進んでいる (出所)thoibaonganhang.vn

ベトナムの小売業については以下のレポートで詳しく紹介しています。

保険・社会保障

社会保険や健康保険などを運営するベトナム社会保障庁(VSS)は、保険加入者により高度なサービスを提供するために「エコシステム4.0」を構築している。このエコシステムには、中央から地方までつながった情報技術システム、マルチプラットフォームのソフトウェアアプリケーションなどが含まれる。VSSはデータベースに基づいて、保険加入者、保険加入のプロセス、および保険契約を包括的に管理している。

2021年、ベトナムの保険業界全体で、約30のアプリケーションシステム、約9800万人のデータベース(全国の約2800万世帯に相当)、12000以上の医療検査・治療施設、公共サービスを利用する全国50万以上の組織・企業と省庁が存在することになった。VSSは、技術インフラ、国民保険データベース、基本サービス(本人確認、対話、顧客ケア、リスク管理、セキュリティ)、参加者にサービスを提供するソフトウェアについて常に改良を続けている。特に、データマイニングという新しいアプローチで、社会保障体制の改善につなげている。

社会保障体制の鍵となるビッグデータ (出所)mic.vn

災害・気象

ベトナムでは毎年、自然災害により平均400人以上の人命に影響を与え、GDPの約0.5%の物的損失を引き起こし、環境、生活条件だけでなく、経済・社会に影響を与えると同時に、国の持続的発展に大きな影響を及ぼしている 。今後数年間、ベトナムは自然災害に遭遇するリスクが高く、損失はGDPの2.7%を占め、3,900万人のベトナム人が影響を受けると予測されている。

洪水、干ばつ、塩害、暴風雨、地滑り、鉄砲水の警告を予測する数値モデル、衛星からの災害警報監視システム、IoTシステムで接続された現場メーターによる災害監視システム、ビッグデータなど、さまざまな種類の自然災害の予測・警報に先進技術の応用が開始されている。

ベトナムでは、災害による死傷者・不明者の約8割が洪水と暴風によるものである。これに対しては衛星システムTRMM/GPの降雨データの更なる活用が期待される。ベトナムに被害を与える暴風雨を海上から3次元で観測し、雨域の水平・垂直分布構造、発達・移動中のフィールドの変化などを正確に把握することが可能になる。

南シナ海の嵐に浮かぶ雲のシミュレーション (出所)stnmt.quangbinh.gov.vn

交通

ベトナム道路局(DRVN)は、ビッグデータを収集し、以下のようなデータベースシステムを展開・構築している。路線監視システム、車両負荷制御システム、運転免許証システム、道路資産管理システム(VRAMP、LRAMP)、舗装管理システム(PMS)、橋梁管理システム(VBMS、LBMS)、料金監視システムなどがある。

道路交通管理の分野では、「デジタルマップに基づく現在のモニタリングと速度制御」システムは、効率的な交通管理、データマイニング、制御システムであり、データの受信、モニタリング、記録、分析、DRVNと地方の管理要件に応じたレポートの作成などを含む。現在までに、全国65万台以上の車両の走行データを統合している。ベトナム都市部での交通渋滞は既に喫緊の課題であるため、ベトナム人のライフスタイルを向上させることが期待されている。

車両管理については、運転免許証管理データベースシステムが構築され、登録から免許証交付までの学習者を管理している。現在、約600万件の自動車運転免許と1500万件以上のバイク運転免許を含む運転免許データがDRVNに集約されており、運転免許や運転違反に関する情報の照合や検索を支援する電子運転免許管理ウェブサイトが開設されている。交通運輸省と63の省市は、運転免許証の変更に関するレベル3の公共サービスを実施し、これまでに運転免許証の変更件数は48,000件以上に上る。国際運転免許証の発行に関してはレベル4の公共サービスを実施しており、これまでのところ、国際運転免許証の発行数は6,500件以上となっている。ベトナムではオンライン公共サービスがレベル1~4に分類されており、4が最高、1が最低となっている。

車両負荷管理システムは、2013年からDRVNが構築・運営している。現在までに、集中型車両負荷データ監視・管理ソフトウェアシステムは67の車両負荷制御ステーションに接続されている。移動式と固定式の45の車両荷重管理ステーションは、毎日平均6万件以上の車両荷重管理投票を処理しており、国家管理機関の車両荷重管理の状況を統計・報告するためのデータソースとして機能している。

道路の管理と保守において、DRVNは世界銀行のODAを受け、ベトナム道路資産管理プロジェクト(VRAMP)を実施した。特に、路面調査システム(PMS)は、道路管理部門と地方自治体が管理する22,000kmを超える国道のデータを収集する。ベトナム橋梁管理システム(VBMS)の場合、橋梁管理データベースには、国道ネットワーク上の6,000を超える橋梁の集計データが含まれ、一部の管理区域内では3,900の橋梁のリアルタイム情報が含まれる。ローカルロードブリッジ(LBMS)にも同様のシステムを実装している。

DRVNは他にも多くのシステムを展開する。例えば、Bai Chay、My Thuan、Rach Mieu、Can Thoの4つの主要な橋でのケーブル滞在型橋梁監視システムである。このシステムは、風、雨、湿度、霧、地震、温度、膨張、車両負荷、ケーブルの張力など、橋梁構造に影響を与える要因の指標を提供する。レポート抽出ソフトウェアによって収集されたデータに基づいて専門家が分析し、タイムリーなメンテナンス作業を積極的に計画する。

ベトナムの交通計画におけるビッグデータ活用 (出所)baogiaothong.vn

スマート農業

ベトナム農業農村開発省科学技術環境局のNguyen Thi Thu Thuy氏は、農業界はほとんどの分野でDXソリューションとアプリケーション開発に注力し始めていると述べた。

農業では、環境、植物の種類、成長段階に関するデータを分析できるソフトウェアなどのデジタル技術製品を通じて、IoTとビッグデータ技術が適用され始めている。

大規模畜産では、IoT、ブロックチェーン、バイオテクノロジーなどの技術が広く適用されている。酪農では、TH True MilkとVinamilkの大企業がデジタル技術を最も活用している

林業では、森林品種や林産物の管理におけるバーコードDNA技術、森林火災の早期発見と警告のためのGIS技術、森林減少や森林劣化のモニタリングソフトウェアなどが広く利用されている。

漁業においても、超音波魚群探知機、流量計、衛星電話、地引網受信機、網の回収・放出システム、GIS技術、全地球測位システム(GPS)の利用による沖合漁船団の管理など、デジタル化が進んでいる。さらに、選択的バイオテクノロジー、高収量・高品質品種の育種、再循環式養殖システム(RAS)、バイオフロック技術(BT)、ナノテクノロジー、ケージ培養技術、冷水魚養殖技術等も応用されている。

人工知能技術は、エビの養殖において、水質、飼料管理、エビの健康状態などのデータ分析に利用されている。自動化技術は水産加工に広く適用され、生産コストの削減や水産物の品質確保などに役立っている。

一方で、スマート農業人材の確保や中小企業への技術普及、インフラ不足などの課題も散見され、外資系企業の参入が期待される。

農業大国ベトナムでは、スマート農業への期待も大きい (出所)ictvietnam.vn

EC

ベトナムでは、デジタル技術を商業に応用することで生み出された経済価値が2017年に81兆ドンに達した。2030年には953兆ドンに達する見通しもある。ベトナムの2030年までのビジョンを示した「国家データ戦略案」によると、ベトナム政府はデジタル経済がGDPの5%に貢献することを目標としている。

ベトナム企業が関心を寄せているのは、事業展開を計画、実行する上で必要となる信頼性の高いデータをいかに手に入れるか、ということである。大企業にとって投資の可能性は議論の余地がないが、中小企業とのビジネスではデータの収集と活用の課題はより複雑になる。

中小企業は、注文、返品率、平均購入期間、購入額などの単純な指標に注意を払うだけで、現在のサービスに対する顧客の満足度を確認できる。

また、POSシステム、ECプラットフォームの普及と「オープン化」によって、データ収集・分析システムの維持コストは従来よりもはるかに低くなっている。広告におけるデータ活用も、より高度に行われることが期待されており、今後ベトナムでのマーケティングは複雑化していくと考えられる。

ベトナムではコロナ禍を契機にECが急発展 (出所)nld.com.vn

ベトナムのECについては以下の記事で詳しく紹介しています。

医療

ベトナムにはデジタルヘルステクノロジー市場が発展するためのすべての潜在的要因があると言われている。ベトナムの人口は、医療分野におけるデジタルトランスフォーメーションに適した人口学的特性を有しているからである。ベトナムは、アジアでは比較的高齢化が進んでいる国の一つである。保健省の統計によると、2018年の高齢者の診察・治療件数は約5700万件で、全国の診察・治療件数の34%を占めている。

しベトナムの医療業界では、ビッグデータの活用が広く見られる。電子カルテ(EMR)、臨床判断支援(CDS)、画像診断(メディカル・イメージング)、遺伝子データ(ゲノミクス)などのソフトウェアにより、医師は各患者の健康状態を迅速に把握し、タイムリーに治療を行うことができるようになった。

さらに、医療業界におけるビッグデータの活用により、自宅での健康状態の把握もこれまで以上に容易になる。健康状態をリアルタイムで検出する分析装置によって、患者一人ひとりにより適した処方箋が提供可能になる。

医療分野でのビッグデータ活用も進行中 (出所)ifu.vn

ベトナムの医薬品・医療事情については以下の記事で詳しく紹介しています。

銀行・金融

ベトナムの銀行・金融業界はビッグデータ活用により、新たな発展の機会を得ている。ビッグデータと組み合わせた機械学習は、支出、貯蓄、投資に関するガイドを常に提供し、正確なパーソナライズが可能になっている。

例えば、ベトティンバンク(Viettinbank)は、データウェアハウス、BI(Business Intelligence)、MDM(Master Data Management)を通じて、データインフラの統合と構築を進めている。これは、銀行業界がビッグデータの可能性を評価し、これまで以上に強力に成長することについて、正しい認識を持っていることを証明している。リスク・モデリング、詐欺検出、顧客セグメンテーションにより、銀行は信用リスクを検出し顧客をスクリーニングすることもできる。

データ分析を通じて顧客を理解することで、銀行は新たなサービスを提供できる。各顧客に合わせて商品をパーソナライズしたり、クレジットカードの審査をしたり、特定の顧客へのローンをタイムリーに提案する事例がある。

例えば、VIB(ベトナム国際商業共同株式銀行)はクレジットカードの発行と承認プロセスにおいて、AIとビッグデータ、そしてe-KYC(Electronic Know Your Customer)、e-Signatureなどの最新技術を高いレベルで適用している。VIBは、eカード版におけるカード利用までの処理・承認時間について、わずか15~30分(市場平均の500分の1)まで短縮した。

さらに、データを活用して顧客の行動を分析することで、金融情報や消費者行動に基づいた商品提案を行い、顧客と銀行の双方にとってより最適な商品ソリューションを生み出す事が出来る。

例えば、TPBank では2022年1月~5月の期間で、オンライン・バンキングのサービスを利用するために登録した顧客の数は前年同期比で87%増加した。特に、TPBankアプリで包括的なe-KYC方式を導入したおかげで、e-KYCによって口座開設した顧客数は同期間中に790%増加した。また、TPBankのオンライン取引件数も大幅に増加した。現在、オンライン取引件数は銀行全体の取引件数の92%を占めている。

銀行・金融業務におけるビッグデータ活用 (出所)thitruongtaichinhtiente.vn

ベトナム企業の動き

ベトナムでビッグデータ及びデータ活用を特に強く推進している企業として、ビングループ(Vingroup)、FPTソフトウェア、ベトテル(Viettel)の3つの大企業が挙げられる。

ビングループ(Vingroup)

グループ(Vingroup)は1993年に設立されたベトナム最大のコングロマリットで、現在は事業の集約再編を推し進めながら、不動産開発、電気自動車生産、医療、教育などに事業展開している。

2021年9月、Vingroup Corporation(VIC)は、ビンビッグデータ(VinBigData)を設立し、定款資本金は約4710億VND、99%がビングループから拠出された。ビンビッグデータは25の事業分野を登録し、そのうち科学研究と技術開発が2つの主要分野となっている。

ビンビッグデータは、基礎研究、応用製品開発、科学技術の資金調達とトレーニングの3つのコア分野を中心に、研究所-企業モデルで運営される。主な研究テーマは、計算生物医学、音声言語処理、コンピュータビジョン、医療画像処理などである。

ビンビッグデータのエコシステムには、精密医療をサポートするゲノムデータ解析プラットフォームである「VinGen」、自然言語処理技術から開発した製品群である「VinBase Language」、情報の識別・解析・抽出をサポートするプラットフォーム「VinBase Vision」、医療画像収集・送信システム上の統合人工知能プラットフォーム「VinDr」が含まれる。

ビンビッグデータは、200人以上のエンジニアと科学者からなるチームを持ち、コア技術を習得することで国際的な研究プロジェクトからベトナムを代表する技術製品を開発し、ベトナム人の生活に貢献するという長期的ビジョンを持っている。

2021年12月、ビングループはビンビッグデータが研究開発した仮想アシスタントViViを導入した。ViViはビングループが運営する自動車メーカーであるビンファスト(VinFast)のスマートEVに搭載され、Siri、Alexa、Google Assistantと同じ役割を持つ。

VinBigdataのデータサイエンティスト (出所)vnbusiness.vn

FPTソフトウェア

FPTソフトウェア(FPT Corporationのグループ企業)は、DXを推進する東南アジアの大手テクノロジー企業であり、世界26カ国に57のオフィスを構えている。

2020年6月、FPTソフトウェアはデータ応用研究に特化するグループ企業 Trandataを設立し、ベトナム市場向けのデータプラットフォームを提供している。ビッグデータ、人工知能、ブロックチェーン技術の応用を通じて、Trandataは銀行・金融、Eコマース、教育、健康、その他多くの産業など様々な分野でのデータ活用を目指す。

2022年1月19日、Trandataは、日本最大級である6000万人規模の消費者購買データを扱うビッグデータプラットフォームを所有する株式会社True Dataと戦略的事業協力協定を締結した。

この提携により、ベトナムの消費者の日本製品に対する消費行動の調査や、ベトナムの小売市場の予測を行い、共同で事業拡大や技術ソリューションの開発を推進する。具体的には、True DataはTrandata社に大規模な投資を行い、ベトナム市場におけるビッグデータ技術を中心としたデータビジネスの拡大を目指する。

Trandata (FPT Software)とTrue Dataのオンライン調印式 (出所)aptech.fpt.edu.vn

ベトテル(Viettel)

ベトテル(Viettel)は1989年6月1日に設立された、ベトナム国防省所有の国営企業であり、ベトナムで最大手の移動体通信事業者である。現在、Viettelはアジア、アメリカ、アフリカの13カ国で投資・事業を展開しており、その事業ターゲットはベトナム人口の約3倍に相当する2億7千万人である。

12月18日、ベトナム情報通信省は、ベトテルデータマイニングプラットフォーム(Viettel Data Mining Platform)を立ち上げた。

Viettel Data Mining Platformは、例えば次のような世界最先端の技術を適用している。ビッグデータ処理技術、連続データ(ビッグデータ、ストリーミングデータ)、ソーシャルネットワークのデータ集計(クローラー)技術、ベトナム語の自然言語処理技術(NLP)、光学文字認識(OCR)、データ分析のためのデータマイニング技術、統計アルゴリズム、機械学習などである。

Viettel Data Mining Platformは具体的には、企業経営における予測、リスク分析、異常の検出を行うことができる。例えば、金融不正の検出、労働災害の防止、財産損失の回避、在庫の最小化などである。

Viettel Data Mining Platformは現在、統計局、14の省市、Viettel Construction、PC1 Groupなどの組織で導入されている。

Viettel Data Mining Platformの立ち上げ式 (出所)laodong.vn

ベトナムの大手企業については以下の記事で詳しく紹介しています。

ベトナムにおけるデータセンターの市場規模

データセンターとは、サーバー等の各種コンピューターや通信設備の設置・運用に特化した施設であり、重要なITインフラの1つとされている。

ベトナムでは、国内で収集したデータを国内で保管する法律があるため、ビッグデータの発展とデータセンターの発展は表裏一体の関係である。

ベトナムのデータセンター市場規模は、2020年時点で8億5600万USDとなった。2016年には5億3203万USDだったので、4年間で約60%成長している。

今後のベトナムのデータセンター市場は、2026年までは平均で年間14.64%を超える成長が見込まれており、約20億USDに達すると予測されている。

市場調査会社ResearchAndMarketsによると、ベトナムは世界のデータセンター業界において、目覚しい成長と国際標準のサービス提供能力を備えた新興市場10カ国の内の1つと評価されている。

このように、ベトナムのデータセンターは急速に成長しているので、同時にビッグデータ活用も急速に成長していくものと考えられる。

ベトナムのデータセンターをソリューション別に見ると、ITインフラ、一般インフラ、電気インフラ、機械インフラ、その他インフラに分類される。ITインフラは、需要増により全体の65.62%を占めている。タイプ別に見ると、企業とウェブホスティングに分類される。企業は64.56%を占め、企業におけるデータストレージソリューションの需要増加により、今後も拡大すると予測される。エンドユーザー業界別に見ると、IT・通信、政府、BFSI、ヘルスケア、その他が含まれる。

まとめ・今後の見通し

ベトナムでは小売業を始めとした多くの業界でビッグデータの活用が推進されている。ビジネス的な側面だけでなく、医療や社会保障、その他行政など公共性の高い分野でも政府主導でビッグデータ活用事例が多く見られる。

ベトナムでのビッグデータ活用は、主に業界トップクラスの大手企業によって先導されており、中小企業にはまだあまり見られない。しかしデータセンターの市場規模が示している通り、ベトナム全体でのビッグデータ活用は今後も伸び続ける見通しである。

このような流れは、日本企業にとっては追い風であると考えられる。ベトナムの日常生活・ビジネスが先進国に近づけば、日本企業にとっては参入時のギャップが小さくなる。参入後も、例えば小売業・製造業の場合はサプライチェーンの管理が容易になるなど、メリットが大きいと考えられる。 一方で、データ保存や個人情報の利用に関する法律は、ベトナムでは依然未整備な部分が多く、判断が非常に難しい。リスクヘッジのためにはベトナムの弁護士やコンサルタントなど、外部パートナーを活用することが好ましい。

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