ベトナム経済・ビジネス情報サイト
× 閉じる
貿易・輸出入

【2021最新版】ベトナムの主要輸出品目~農林水産物編~

更新)

運営会社について
このメディアは、ベトナムビジネスの経営課題を解決する
ベトナム特化コンサルティング会社、ONE-VALUE株式会社によって運営されています。

無料のお問合せはこちらから

ベトナムの主要輸出品目 

 ベトナムの貿易は、ここ10年で爆発的に成長している。2010年のベトナムの貿易輸出額は約720億ドルだが、2020年には約2830億ドルに達しており、10年間で約3.7倍にもなっている。 

貿易は外貨を獲得するための重要な経済活動であり、ベトナムの経済発展にとって必要不可欠な存在である。ではベトナムは、具体的にどのような物品を輸出しているのだろうか。特に大きなシェアを占めているのは、縫製品、履物、機器類(コンピューター電子製品・同部品、電話機・同部品、機械設備・同部品、輸送機器)などだが、本レポートでは農林水産物にフォーカスして紹介する。 

 本レポートを読めば、ベトナムの中核産業である農林水産業の全容を把握できるだろう。 

ベトナムにおける農林水産業 

 ベトナムは温暖な気候と豊かな土壌に恵まれており、全土で盛んに農業・林業が行われている。またベトナムは海に面しており、水産業も活発である。 

 ベトナム統計総局によると、農林水産業は2019年のGDP(国内総生産)の約14%を占めており、総輸出高は約413億米ドルに達し、全産業の総輸出高の約16%を占めている。また2017年のデータによると、労働人口の約41%が農林水産業に従事しており、全産業で最大のシェアを占めている。  


 このとおり、ベトナムの農林水産業は、貿易だけでなく労働市場においても非常に重要な産業であると言える。ただ産業ごとのGDP比率と労働人口比率の2つを考慮すると、人が余っている産業でもあり、政府は生産性改善のためのハイテク農業を推進している。 
 次は農業、林業、水産業の3つごとに概観する。 

農業 

 ベトナムは毎年大量の農産物を輸出している。特にコメ、コーヒー、ゴム、カシューナッツなどは、世界トップクラスの輸出量を誇っている。しかしベトナムの農業は、林業・水産業と比較するとかなり課題点が多い。ベトナムは農産物の輸出において、量の割には利益が少ないという状態にある。ベトナムの輸出品目を輸出量でなく輸出高が大きい順で並べると、農産物は上位10品目に入らない。 

原因として、収穫後の処理のレベルが低いことが挙げられる。農産物の加工、梱包、そして流通のコールドチェーンといった分野が未発達で、十分な付加価値が付いていない。 

 日本産の農産物には、たくさんの「ブランド」が存在している。例えばコメやイチゴは、多くのブランドが認知されているだろう。ベトナムから輸出される農産物はブランドの無い物がほとんどで、あまり消費者にベトナム産だということを意識されていない。 

 加工技術の向上と、グローバル市場に向けたブランディングの2点が、現在のベトナム農業の重要課題である。ポジティブに見れば、ベトナム農業にはまだまだ大きなチャンスが眠っており、全盛期はまだ来ていないとも言える。 

林業 

ベトナムは、林業においても世界トップクラスの生産国である。ベトナムは木製家具の輸出量で東南アジア1位、アジアで2位、世界では5位の国だ。2019年、ベトナムの木製家具の総輸出売上高は100億米ドルに達している。ベトナムの木製家具の主要輸出先は、アメリカ、EU、日本、中国などである。このうち日本への輸出は2番目に多い。 

 ベトナムの国土は3312万haであるが、その83%が農林水産業に使用されている。またこの内半分以上が林地となっており、ベトナムにおける林業の規模感を推し量ることが出来る。 

 もちろん、森林は特用林、保護林、生産用林という区別をされているが、この中では生産用林が最も森林面積が広い。具体的には約780万haで、2番目に広い保護林の約1.6倍である。 

 近年では木製家具の製造する際の技術も向上しており、複雑な仕様にも対応できるようになっている。 

水産業 

ベトナムは南北に長く海岸線が伸びており、水産業は国内の主要な産業の1つとなっている。水産業は国内総生産の5%近くを占め、創出額の3.2%を占めており、水産業に従事する労働者は4百万人程度にのぼっている。現在、世界170の市場でベトナムの海産物が輸入されている。 

2019年の水産物輸出額は85億ドルに及び、前年2018年の87億ドルにわずかに及ばなかったが、前年と同じ水準を維持した。2020年では9月末時点で60億ドルに及んでおり、2019年と同じ水準となる見通しである。輸出先を見ると、アメリカ(17.2%)、日本(17/1%)、中国(14.4%)が大きな市場となっており、次いで韓国(9.2%)、英国(3.4%)が並んでいる。今後は中国での水産物消費が増加していくと考えられており、中国向け輸出が伸びる可能性が高い。 

また、2020年8月にはベトナムEU自由貿易協定(EVFTA)が発行され、水産物はEVFTAの恩恵を最も受ける品目の1つと言われている。農業農村開発省に属する漁業総局によれば、2020年及び2030年までの開発目標として、ベトナムの漁業開発マスタープランでは、効率的かつ高品質である世界レベルの水産物、加工品を作り出すことを目標としており、広範囲の生産に集中することを目指している。この計画を通じて、労働者の給与や生活条件の向上、ベトナムの島と沿岸水域の国家安全と防衛に貢献するとしている。 

ベトナムから輸出される農林水産物 

 本章では、ベトナムが具体的にどのような農林水産物を輸出しているのかを紹介する。 

農産物 

 ベトナムで生産される主要な農産物は、コメ、コーヒー、青果物類、ゴム、胡椒、カシューナッツなどである。これらについてはそれぞれの見出しを設け、個別で紹介する。他の主要な農産物は、サトウキビ、キャッサバ(タピオカの原料)などがある。 

コメ 

ベトナムは世界トップクラスのコメ輸出国であり、2020年にはタイを上回ってコメ輸出量で世界2位に浮上する見通しである。コメの輸出金額を見ると、安定的に毎年20億米ドル以上のコメを輸出している。2019年の輸出額は28億ドルとなり、2018年の30億ドルを下回った。輸出先の国別割合をみると、フィリピン(31.5%)、コートジボワール(9.0%)、中国(8.6%)、マレーシア(7.8%)、ガーナ(7.6%)となっており、アジア、アフリカ諸国が大きなシェアを占めている。今後これらの国が経済成長、人口増加するに連れてコメの需要が高まると予想されるため、ベトナムのコメ輸出市場はこれからも安定して成長すると考えられる。  

 余談だが、ベトナムはコメの国内消費も、世界トップクラスで盛んである。1人当たりの1日のコメ消費量では、ベトナムは世界4位であると言われている。対する日本は、50位である。ベトナム国内におけるコメ消費の多さに対しては、2点の理由が考えられる。1つはコメが主食であること、2つ目は米粉を使った麺類が発達していることである。ベトナムの米粉麺といえばフォーが有名だが、ブンという米粉麺も非常に親しまれており、多種多様な派生系の料理が存在する。またそれ以外にも、米粉を使ったローカルな料理は多数存在する。 

コーヒー 

ベトナムは北半球の熱帯地域にあることはよく知られている。ベトナムの気候は、コーヒーに適しているだけではなく、ベトナムコーヒーに特別な味わいをもたらす。特に、ベトナムの南部は赤道周辺にあり、高温多湿の熱帯気候は、ロブスターコーヒーの栽培に相応しい気候である。タイグエン地域(中央高原地帯)は、国内生産量のシェア50%を超えるダクラク省があり、ベトナムコーヒー農場の殆どが集中していると言える。寒冷期がある北部はアラビカコーヒーも栽培可能である。ベトナムはインスタントコーヒーとして世界一位のシェアとなっているロブスターコーヒーの生産、輸出国となっており、生産量別でブラジルに次ぎ第二位である。現在、ベトナムは多くのコーヒー豆焙煎機を持ち、ロブスターコーヒーの大切な拠り所となっている。2019年の輸出額は28.5億ドルに及び、2018年35.3億ドルを下回る結果となった。 

日本で良く飲まれるコーヒーはアラビカ種であるため、ベトナムのコーヒーはまだ日本では注目されていない。しかしネスレを始めとするコーヒーの国際的企業がベトナムのコーヒー農家に対してアラビカ種の栽培支援を行うなど、ベトナム国内でも徐々にアラビカ種の栽培が増えている。日本のコーヒー豆販売店でもベトナムのコーヒー豆が見かけられるようになり、今後はアラビカ種の栽培が注目される。また現在ベトナムは生豆の輸出が多いが、国内で焙煎技術や加工技術が発展することによって、焙煎された豆やインスタントコーヒーなどの加工品の輸出量が増えると予想される。こうした国内で付加価値が着けられた商品の輸出拡大に伴ってベトナムのコーヒー輸出市場は大きな発展余地を持っていると言える。 

青果物 

果物及び野菜の生産はベトナムの農産業にとって非常に重要である。ベトナムは、果物や野菜の生産に関して、熱帯、亜熱帯の野菜と果物の栽培に適する気候・土壌をはじめとする多くの農業に適した条件が揃っている。 

ベトナムの青果物生産は、規模や生産構造において重要な発展に寄与している。ベトナム農業農村開発省のデータによると、南部は年間400万トン以上の果物を生産する果樹栽培面積を40万ヘクタールしており、果樹栽培面積の53%、国内の青果物の総生産量の57%を占めている。生産者は、高付加価値かつ高品質の青果物を多く作り出すため、ベトギャップ(ベトナム農業生産工程管理)とグローバルギャップ(グローバル農業生産工程管理)という基準を定めており、先進的な生産モデルを運用している。例を挙げれば、ナムロイグレープフルーツ、ホアンハウドラゴンフルーツ、タンチェウグレープフルーツ、ローレンスターフルーツ、ホアロックマンゴー、バクザンライチ、ハイズオンライチである。 

20に及ぶ輸出先国の中で、中国は64.8%を占める最大輸出先となった。ドラゴンフルーツ、リュウガン、ランブータン、マンゴー、グレープフルーツ、スターフルーツ、バナナ、ドリアンは重要な輸出品である。輸出先シェアとしては中国に次いで、アメリカ(4.0%)、韓国(3.5%)、日本(3.3%)、オランダ(2.1%)となっている。 

前述したベトギャップやグローバルギャップのような施策は、前述した生産物の基準の低さを改善することに寄与している。 

 実際に、ベトナムの青果物輸出は前進している。日本政府がベトナム産マンゴーの輸入を解禁したのは、2015年のことだった。2020年には、ベトナム産ライチの輸入が解禁され、イオン(株)が日本国内の250店舗で販売した。 

ゴム 

ベトナムは天然ゴムの生産量、輸出額で世界トップレベルであり、天然ゴムはベトナムの三大主要農産物の一つである。気候、土と天気の好条件がゴムの木の栽培とゴム生産業の発展に適していると言える。ベトナム国内では117年前からゴムの木を植え初められた。この産業は86年に及ぶ発展と長い歴史を持つ。2014~2018年の間、ゴムによって得られた収益はほぼ順調に増加している。 

2019年の輸出額は23億ドルに及び、前年2018年の28億ドルを下回る結果となった。2020年の輸出額は9月末時点で14億ドルにとどまっており、2019年の水準を下回る見込みだ。輸出先シェアを見ると、中国が67.4%とトップシェアを占めており、次いでインド(7.8%)、韓国(2.9%)、アメリカ(2.1%)、ドイツ(2.0%)となっている。 

胡椒 

過去10年で、ベトナムは胡椒生産、輸出に関して国際的な影響力を増している。ベトナムコショウ協会によれば、「14年間連続で、ベトナムは胡椒の生産量と輸出量において世界をリードする国となり、ベトナムの農産業の成長に多大なる貢献をし、農家の収入を増やした。ベトナムはアジア、ヨーロッパ、アメリカとアフリカにある97ヶ国に胡椒を輸出している。 

太平洋横断パートナーシップ(CPTPP)とベトナムとEUの自由貿易協定(EVFTA)の包括的かつ進歩的な協定は、コショウ産業への輸出拡大の機会として評価されている。 商工省の輸出入貿易局の副局長Tran Quoc Toan氏によると、CPTPPには、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、チリ、ペルー、日本の9か国が即時に関税を撤廃することを約束している。ベトナムのコショウ輸出額を見ると、2016年をピークに減少傾向にあり。2019年は7.1億ドルと前年2018年の7.5億円をわずかに下回った。2020年の輸出額は9月末時点でも4.8億ドルにとどまっており、2019年の輸出額を下回るものと思われる。輸出先に目を転じると、アメリカ(19.8%)、インド(6.8%)、ドイツ(4.4%)、オランダ(3.8%)、パキスタン(3.4%)という構成比になっている。 

カシューナッツ 

ベトナムのカシューナッツ輸出額は2017年35億ドルでピークを迎えた後は、横ばいが続いており、2018年には33.6億ドル、2019年には32.8億ドルとなった。2020年9月末時点では、23億ドルにとどまっており、2019年と同じ水準になることが予測される。カシューナッツはベトナムの主要な輸出品目の1つである。機器類や縫製品と比較すれば、輸出額は非常に小さいものの、ベトナムは過去17年間にわたって、カシューナッツ生産量で世界トップの地位を守ってきた。国連食糧農業機関(FAO)によれば、2018年のベトナムのカシューナッツ(殻付き)生産量は前年比23%増の約266万トン。2位のインド(約79万トン)に3.4倍の差を付けている。2018年は生産量の14%に当たる約37万トンが輸出された。ベトナムカシューナッツ協会によると、輸出量も世界一であるという。2018年にはベトナムのカシューナッツ輸出額は世界全体のカシューナッツ輸出総額の60%超を占めており、同じくカシューナッツ輸出の盛んなインドを押さえ、ベトナムはカシューナッツ輸出量でトップを維持した。一方で、カシューナッツ業界の今後の計画については、量の削減と質の向上、高付加価値化を大きな方針としている。 

木製家具 

ベトナムには、2000に及ぶ家具メーカーがあり、木製家具は主要な輸出品目の1つとなっている。政府の統計によれば、ベトナムは年間200㎥の木材を使用する木材製造・加工工場が1200箇所存在し、そのうち374は国有企業が占めており、加工量の3割程度を占めている。残りは民間企業または外資企業が占めているという。 

2018年、ベトナムは家具などを中心とした木製品の輸出で世界第3位、アジアでは中国に次ぐ2位、ASEAN域内では首位に立っている。現在、世界120か国に輸出されており、2019年の輸出額は106億ドルに達し、総輸出額の約4.0%を占めるに至った。前年の輸出額89億ドルから約19.1% の伸び率となった。主要輸出相手国としては、アメリカ(30.3%)、日本(13.8%)、ドイツ(6.2%)、イギリス(5.1%)、フランス(4.8%)というシェア構造となっており、日本はベトナムの木材・木製品輸出先の重要な市場である。一般社団法人日本家具産業振興会の統計によれば、2019年における日本の木製家具の輸入額は約2,386億円で、そのうち、ベトナムからの輸入は約598億円で全体の25.0%を占めている。ベトナムは首位の中国(1,221億円、51.1%)に次ぐ規模であり、近年ではベトナムによる輸入の割合が中国にとって代わる形で増加が続いている。 

水産物 

漁業は、ベトナムの国内総生産の5%を占める大きな産業である。2019年には、ベトナムの水産物輸出は約8,500万米ドルとなり、総輸出高の3%を占めた。世界的に見ても、ベトナムの水産物輸出高はトップ5に入っている。 

ベトナムの水産物の主な輸出先は、アメリカ、日本、中国、韓国などがある。では具体的に、どういった品目が輸出されているのだろうか。 

エビ 

ベトナムの水産物輸出の3割以上はエビが占めている。ベトナムのエビ輸出の主要マーケットは米国で、その中でバナメイエビの冷凍むきエビが輸出の4割を占めている。 

 以前から日本のスーパーでよく見られるベトナム産のエビは、ブラックタイガーという品種である。依然多く養殖されているが、現在の生産量はバナメイエビの方が多い。 

 バナメイエビが増加した理由は、ブラックタイガーよりも養殖に適した生態を持つからである。ブラックタイガーは砂の中に潜って生活をするが、バナメイエビは水中を活発に泳ぎ回るので、ブラックタイガーよりも狭いスペースでも養殖が可能だ。 

バサ(冷凍ナマズ) 

バサはナマズの一種で、白身魚である。味は美味でクセが無いので、多くの国々で多種多様な料理に使用されている。体長は1mを超えるほど大きいので可食部が多く、価格も安い。年間生産量は約200万トンである。 

 ベトナム産バサの主な輸出先はアメリカ、EU、香港、メキシコなどが挙げられる。日本への輸出は比較的少量である。しかし日本で流通しているバサのほぼ100%がベトナム産なので、ベトナムにとって日本も非常に有望なマーケットである。 

まとめ 

 本レポートでは、ベトナムの中核産業である農林水産業について、網羅的に紹介した。ベトナムは既に有数の生産国であるが、各産業にはまだまだ大きな伸びしろが眠っている。特に農業のハイテク化、加工技術、コールドチェーンの改善の余地は大きい。 

 農林水産業は、ベトナム政府が定める投資優遇措置の対象となっており、プロジェクトに応じて法人税、土地使用税、個人所得税などが減免されるケースがある。2021年7月現在、世界的に未だコロナ禍にあるが、ベトナムの輸出高は上昇傾向にある。ベトナムの生産量に世界水準の技術が追い付く時が、ベトナムの農林水産業の全盛期となるだろう。 

ベトナム市場調査・情報収集ならONE-VALUE
資料サンプル

ベトナムに特化した経営コンサルティングのONE-VALUEはベトナム業界の最新動向、通常はアプローチできない企業や政府へのヒアリング調査、消費者向けにインタビュー調査がご提供可能です。

引用・転載について
本レポートはONE-VALUE株式会社の独自の調査及び
各種統計データにより作成されたものです。
記事・レポートを引用・転載する場合、本webサイトのリンクを貼りつけた上で、
VietBizの出所として取り扱いをお願いします。

VietBiz(ベトビズ)
What’s VietBiz
ベトビズってなに?

ベトビズは、ベトナムで事業を行う、あるいはこれから行う
全てのビジネスパーソンを支援するWebメディアです。

NEW

詳細
+
NEW
タイトルとURLをコピーしました